死ぬと生きる 7

帰りのホームルームで、担任から聞いた、サナエの情報は、死因のみ。


首吊り自殺。

その言葉が、重たくのしかかる。


不思議と、

「何故、サナエは首吊り自殺をしたの?」

とは、聞けなかった。

理由を聞くのが怖い。

それは、後ろめたい事があるからだろうか?


その代わり、アタシの口から出た言葉は、

「遺書は見つかったんですか?」


言い終ると、アタシは唾をゴクリと飲み込む。

すると担任は、


「いや、今の所見つかってない。

そんな物が表に出たら、大変な事になるだろうね。

それと、明日は臨時休校になったから。

多分、明日の夜にお通夜をやると思うし・・、決まり次第全員に連絡する」


淡々と話すその顔には、明らかに疲れの色が出ていた。

自殺なんてしたから、家族に何か聞かれたのだろうか?

それとも、校長に呼び出されたとか?

・・・・・・お通夜って何?アタシも行かなくちゃいけない訳?



後方に座る、ミキとマイの方を見る。

2人とも、何とも言えない難しい顔をしていた。

多分、アタシもそんな顔をしているだろう。


・・・行きたくないよ、お通夜なんて。

だって、もし遺書が見つかってたとしたら、どうする?

それにアタシの名前が書いてあったとしたら・・・・、きっとサナエの家族にアタシは恨まれているに違いない。

怖い!アタシは悪くない!

彼氏を奪ったサナエが悪いんじゃない!

ボサっとしてるにも関わらず、仲間に入れてあげたのに、仇で返したあの子が悪いの!


お通夜になんて行きたくない!

死んだサナエの顔なんて、見たくない!

・・・・でも行かないのは、不自然すぎる。




学校が終わり、3人で家に帰った。

いつも会話が途切れず盛り上がるのに、今日に限っては誰も喋ろうとしない。

無言の帰り道。

家に帰っても、落ち着かず、一睡も出来なかった。



そして翌日の夜。

担任の言葉通り、サナエのお通夜が行われ、うちらは嫌々ながら顔を出す。

一人を除き、クラス全員が俯いたままだった。

誰も、サナエの家族と目を合わせようともしないし、遺影すら見る事を避けている。

全員、後ろめたい事があったから。

だから、直視する事が出来ないんだ。


そんな中、一人で泣き崩れている人物がいた。

それは亮。

彼だけが、泣き崩れ、立つ事が出来なくなっていた。



そっか。

やっとわかった。

サナエが亮の事を好きだったんじゃなくて、亮がサナエの事を好きだったんだね。

・・・・・・・・・・あぁ、キモチワルイ。


「・・・・また晩御飯を食べ損ねた」


目が覚めると、部屋の中は真っ暗になっていた。

時計を見ると、針は2つともてっぺんを指している。



晩御飯は食べれなかったけど、狩るには丁度いい時間だわ。



ベッドから身体を起すと、両手で髪の毛を掻き毟る。

これから、アタシから痛みを取り除いてくれる狩りが出来るっていうのに、

なんだろう、このモヤモヤした気分は・・・。

目が覚めたというのに、憂鬱。


でも、ダラダラはしてられない。

右手が痛む前に、さっさと殺してこなくちゃ。


寝起きでボサボサの頭を、ポニーテールにすると、制服を羽織り、鏡を見ないまま部屋を出た。

暗闇の中でただ人を殺すだけだから、自分の容姿を気にする必要はないしね。

それに、もし鏡を見て、アタシの顔が鬼の形相だったらー・・・・。




前の街と同様。

辺りを見渡しながら、恐る恐る廊下に出る。

涼の姿がない事を確認すると、素早くエレベーターへと乗り込んだ。

・・・・・完璧ね。

後は、無言でフロントの前を通過するのみ。

ホテルから出てしまえば、人の目なんて気にする必要はない。



一歩ホテルから出ると、アタシは両手を頭上に上げ、大きく伸びをする。

さて、始めますか。



この街は、アタシが生まれ育った地元。

深夜に人がある程度集まる場所なんて、把握出来ている。

前の街よりも、簡単に狩る事が出来そうね。



とりあえず手始めに、50人前後の人間を殺すと、遺体を隠さないまま放置し、ホテルへ戻った。

全身血まみれの姿で戻ったから、フロントの人間は一瞬驚いた表情をしていたけれど、

アタシと目が合うとすぐに視線を逸らす。

まるで、見てはいけない物を見てしまったかのように。

・・・愉快だわ。




たっぷりお昼寝したにも関わらず、部屋に入った途端、急激な睡魔が襲ってくる。

なんで?あんなに寝たのに、また眠い。


でもね!今日こそはシャワーを浴びて、汚れを落としてから寝たいの!


フラつきながら、制服を脱ぎ、それを床に落とす。

ゆっくりではあるが、アタシは身に着けている物全てを脱ぎ捨て、

壁に這い蹲りながら、ようやく浴室のドアに手が届いた時、強制的に意識が途切れた。



あぁ、また汚れたまま、アタシは眠るのね。



全裸姿で血で汚れたまま、アタシは深い眠りに落ちる。

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