死ぬと生きる 8



「信じられない!彼女の親友にも手を出そうとしてたのよ!最低な男!」


お通夜が終わった翌日。

まだ、サナエが自殺したという衝撃から立ち直れず、暗い雰囲気になっているクラスメイト。

そいつらの耳に嫌でも聞こえるよう、わざと大きな声で喋る。



「簡単に浮気しようとするなんて、最悪~。

でも、別れて良かったよ!

そんなどうしようもない男と付き合ってたって仕方がないしね。

っていうか、もしかしてサナエはそれが原因で自殺したんじゃない?

親友の彼に迫られたけど、幼馴染っていうアレで断れず悩んだ結果・・・みたいな」



「絶対にそうだよ!だって証拠に、お通夜の時一人だけ鼻水垂らしながらワーワー泣いてたじゃん!

キモイよね~!普通、男なら人前であんなに泣かないでしょ?」



「親友の事自殺に追い込んどいて、なんで何食わぬ顔して学校に来てんの?

まさか サナエが自殺したのは自分のせいじゃない! とか、思っちゃってる?

わー!キモーイ!どんだけ自己中なのよ~」



「・・・ねぇ、聞いてる?なんで返事してくれないのよ!」



マイもミキも、目の前に無言で突っ立ったまま、声を発しない。

どうしちゃったの?

いつもアタシが何か喋れば、一緒に盛り上がってくれるじゃない!

2人とも無言な為、全てアタシの独り言になってしまう。

これじゃあ、まるでアタシ一人が空回りしてるみたいでなんかダサイ。




「あ~・・・・・マジ暗すぎ。これも全部亮のせいね。

見た目も暗ければ、中身も暗い。

いい所がなし!

それに親友を自殺に追い込んだとか、ありえないでしょ。

こいつが元彼とか、汚点でしかないじゃん!最悪~」



静まり返っている教室内。

誰も、アタシに反論する者はいない。


って事は、クラス全員がそう思ってるって事よね?

だって、もしアタシの言っている事が間違っているのであれば、言い返すはずでしょ?

それがないって事は、黙っているけど、皆もそう思ってるって事が証明された訳。




チラっと亮の方を見ると、あいつは生意気にもアタシの事を睨んでいた。

ムカついてアタシも睨み返す。


何様のつもり?

自分の立場わかってるの?



でもまあ、明日からハブられるのは亮で決定だし。

今更、何を言い訳したって遅いわよ。

アタシを振った事、後悔しなさい。



翌朝。

いつも待ち合わせしている場所で、マイとミキが来るのを待っていた。

サナエが生きている頃は4人で、自殺してからは3人で学校へ登校している。

友達なんだから、一緒に学校に行くのは当たり前。

学校へ行くのだけじゃない。

休み時間に一緒に行動するのも、トイレに行くのも、お昼ご飯を食べるのもずっと一緒。

だから、この日もそれが 当たり前 だと思って、二人が来るのを待ち続けた。

・・・しかし、どんなに待っても二人は来ない。


寝坊しちゃったとか?

事故にあったとか?


このまま待っていたら、アタシが遅刻してしまう。

仕方がなく、二人をおいて登校する事にした。

別に裏切ったわけじゃない。

これは仕方がなかったの!




学校に着き教室へ入ると、すでにマイとミキは登校しており、2人は楽しそうに何かを喋っていた。

ずっと待ってたのに、なんでもう着いてるの?

あまりの出来事に、ショックで声が出ない。

入り口の扉付近で立ち尽くしているが、誰もアタシに声をかける事なく、隣をすり抜けていく。

マイとミキもアタシに気づいたが、目が合うとすぐに逸らす。


・・・・どうして?

なんで友達なのに、無視するの?

違う、マイとミキだけじゃない。

他のクラスメイトにしたってそう。

誰もアタシが、ココに立ち尽くしてるっていうのに、声をかけてこうようとしない。


なんで?どうして?普通、一人くらい声かけるでしょ!

こんな所に立ち尽くしてるんだから!

おかしいって思うじゃない!

それなのに、どうして誰も何も言わないの?わかんない!!!

頭に ???? だけが浮かぶ。



マイとミキの近くへ向かうと、


「なんで?いつもの場所で、アタシ・・・待ってたんだよ・・」


本当は怒鳴り散らしてやりたい気分だったけど、それを必死に押えた。

アタシ達は友達だから、素直に謝ってくれれば、許してあげようって思ったの。

それなのに2人は、一瞬こちらをチラっと見ると、すぐに視線を戻し、


「昨日のテレビ面白かったよね~」


「今日の帰り、どこかに寄らない?」


全然違う話をし始める。

何それ!!今そんな話、してないじゃん!

でも、キレちゃいけない。

だってアタシ達友達じゃん?

それに、アタシは凄く優しいから。

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