ミカ 13

あの大人しい校長が何かを叫びながら、必死に車を追いかけている。

どうしちゃったの?

あっという間に小さくなっていく校長。

彼は、姿が見えなくなるまで、何かを必死に叫びながら、こちらに向かって走っていた。

まるで何かのドラマみたいな展開。



そんな2人の行動を不信に思ったアタシは、


「え?何?どうしちゃったの?」


涼に尋ねると、



「あぁ・・・・・、アレ俺の父さん」


そう一言だけ言うと、目を瞑り寝ようとする。

怪しい・・・・、全く話は見えないけど、それだけはバカなアタシでもよくわかる。



「え?父さんって何?え・・、だって客室で親子らしい会話なんてしてなかったじゃん!」


笑いながら突っ込みを入れるが、涼は目をつぶったまま、何も喋ろうとはしない。



「ねぇ!教えてよ!」


そんな涼の肩を掴み、揺さぶるが、答えないまま。

あっという間、車はホテルへ到着。

結局、何も言葉を発しないまま、奴はホテルの自室へと戻った。




「・・・ケチ!つまんないの!・・・っていうか、やっぱキモイ奴」


そうボヤクと、アタシも自分の部屋へと戻る。



今日初めて会った人間を父さんって言うなんて、

とうとうあいつの脳も取り返しがつかないくらいにイカれてきちゃってるわね。


見た目からイカれているマリアに、とりかえしがつかない涼。

それにアタシ。



「・・・はぁ・・・・」


部屋に戻って早々、大きなため息をついた。



ねぇ、ハヤト戻ってきてよ。

唯一、見た目も判断もまともな人間って、貴方しか居ないの。

アタシ一人じゃ、押しつぶされちゃいそうよ。



そんな事を考えてたら、急激な睡魔に襲われる。

あぁ・・・、まただ。

強制的に意識が・・・・途切れる。




「え?今何時?」


目が覚めて、一目散にした行動は現在の時刻確認。

時計は AM0:00 を指しており、



「・・・やっちゃった・・・。夕食、寝過ごしちゃった・・・・・」


その場に蹲る。

今日はある程度の人間を殺せたから、後は夕食をガッツリ食べて、

朝までグッスリ眠るつもりだったのに、予定が大幅に狂った。


どうする?

このままじゃ、また右手が痛くて眠れないじゃない!


なら今から、何かを食べようか?

でも、こんな時間にルームサービスを頼んだって、大体のシェフは帰っちゃっただろうから、時間がかかるに違いない。

ルームサービスを待っている間に、痛みがきたらどうする?


痛いのは嫌!

あの痛みを我慢するなんて、もうしたくないの!


頭の中が、一瞬で痛みへの恐怖へと支配される。



「もうぉおおおおおおおお!!!!」


大きな声で叫び、うな垂れる事数秒。



こうなったのも、全部涼のせいじゃない。

涼が、アタシに討伐させてくれなかったからよ。

頭の中の嗜好が、切り替わる。



またやるしかない。


何かを思いつくと、すくっと立ち上がり、ドアへと歩いていった。




本当は昨日1日で止めるつもりだった。

だって、イケナイ事だってわかってるから。

でも、全部涼が悪いの。

涼が約束を破ったから、今日もやらざる負えなくなった。

それもこれも、全て涼のせい。

そうやって、自分に 理由 を言い聞かせる。



制服のまま、フロントの前を通過し、ホテルの外へと出ると、人通りの少ない道へと歩いていく。

さて今日は、何人殺そうか?


左手のカギ鉄鋼を背中に忍ばせ、今宵も人を切り刻んでいく。

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