消せない傷跡 6

「自分は助かるとでも思っているのか?バカが。

そんな安い手に引っかかるかよ。

罪を犯した人間は殺す。

イジメをした人間は許さない!

その身を持って、罪を償え!」


右手から剣を取り出すと、



「きゃぁっ!」


3人は悲鳴をあげ、その場に座りこんだ。

もしかして、心優しい3人は、イジメた張本人とはいえ、殺される事に同情をしているのだろうか?

だとしたら、こんなにも優しい人間を、イジメ続けたマキを、もっと許せなく思う。


そして、イジメをした張本人は


「凄い!・・・これで私は自由になれる・・・」


両手を口に当てたまま、目をキラキラと光らせている。

ここまで嫌味を言ったにも関わらず、気づかないとか、どういう神経をしているのか?意味がわからない。


こんなバカ、生きているだけでも罪だ。

早く目障りなクズを、消してしまおう。

でも、楽には消さない。




「そこまで喜んで貰えるのなら、嬉しいよ。

早く自由にしてあげよう!イジメなんて下等な事をした、愚かなバカ女を!!!」


そう叫びながら、俺はマキの右肩に剣を突き刺した。

左胸を狙わなかったのは、わざと だ。

こいつには、思いっきり苦痛を味あわせてから殺すんだ!



「きゃああああああああああっ!」


叫び声が室内に響く。

その声は、マキじゃない。

窓側に居る、サヤ、カナコ、ヒトミの声だ。


マキは叫び声を上げる事なく、ただジっと俺の事を見ている。

剣は右肩を貫通し、血が吹き出ているというのに、叫び声一つあげない。

それは何故だろう?痛くないのだろうか?



「ビックリさせてごめんね。でも、もう少しの辛抱だから!

もう少しで排除するから安心して」


叫び声を上げ、ガタガタ震えている3人に声をかける。

安心させる為に微笑んだのだけれど、それでも3人の怯えた表情が変わる事はなかった。


「お前のせいで、どれだけの人間が嫌な思いをしたか?苦しんだのか?わかっているのか!」

生きているだけで、罪!お前には、死あるのみだ!」


叫び声1つあげず、俺の事を見つめているその姿が憎くて、次は両足をスッパリ切断した。



グチャリ。


両足の支えを失った身体は、床に思いっきりたたき付けられる。


「・・・あっ」


その瞬間、少しだけ声が出たものの、苦痛に顔をゆがめながらも、マキは声を押し殺し、黙って俺の事を見ていた。

なんなんだ?こいつは。

普通、ここまでされたら痛くて、泣き叫び、命乞いをするだろう!!



「いやぁああああああああっ!」


むしろ、窓側に居る3人の声の方が大きいくらい。

3人の為に、マキを討伐してるというのに、何故そんなに叫ぶのだろうか?不思議だ。

憎き女が、こんな惨めな姿になっているのだから、普通なら泣いて喜ぶだろうに。




うつ伏せに転がるマキの身体を蹴り、仰向けにする。

足が身体にぶつかった瞬間、



「うっ・・・・」


わずかにうめき声を上げたものの、その後はやはり声を押し殺し、マキは黙ってこちらを見ている。

その目は、俺の事を睨んでいる訳でもなく、先ほどみたくキラキラした目線という訳でもない。

その普通とは違ったリアクションを取るマキに、俺は不気味さを感じていた。



キモチワルイ。


「見るな!見てるんじゃねーよ!」


身体をガンガン蹴っても、マキは俺の事を見続けた。



キモイ。

キモチワルイ。

キモチワルイ!

キモチワルイ!!




「言う事を聞かないのなら、その目潰してやる!!!

お前みたいな奴に、目なんていらなかったんだ!」



両目を潰してやろうと、剣を顔に振り下ろそうとした時、



「涼!やめて!!!!」


マリアの叫び声が聞こえてきた。

振り返ると、ゼェゼェと両肩を震わせながら、ドアに手を置き、深呼吸をしているマリアと目が合う。

こんなにも息を切らしたマリアの姿を見るなんて、初めての事だった。


もしかして、討伐するのに時間がかかったから、それを心配して様子を見に、走ってきてくれたのかな?

そう考えると嬉しくなり、思わず顔が緩んでしまう。



「どうしたんだい?そんなに息を切らしちゃってー・・・」


こちらへ歩いてくるマリアに向かって、左手を伸ばす。

息を切らしているマリアを、椅子にでも座らせようと思ったんだ。



しかし、マリアは俺の隣をすり抜けると、跪き、床に転がっているマキを抱き起こした。

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