第97話過去との決別 5



「ダメだ!涼!ヤってはいけない!戻って来い!今なら、まだ間に合うから!」


背後から、ハヤトの叫び声が聞こえる。

あいつは何を言ってるのだろう?

というか、俺が今から何をやろうとしているのか?わかっているのだろうか?


まだ、間に合う?

何が間に合うというんだ?

もう遅い、手遅れ。

俺はヤらなくてはならない。

片付けなければ、一生俺は変わる事なんて出来ないから。



玄関から堂々と校舎へ侵入する。

すると、


「人殺しが来たぞっ!」


物陰から、誰かの叫び声が聞こえ、その言葉をきっかけに、叫び声を上げながら逃げていくモンスター達の姿が見えた。


何が、 人殺しが来た だよ。

俺を殺そうとしていたのは、そっちだろ?

イジメ抜き、生きる居場所を失わせていったのは、お前等の方だ。


あの時、俺はお前達に 人殺し なんて、暴言を吐かなかった。

それなのに、お前達は俺の事を 人殺し 呼ばわりするのか。

マジ、救えない奴。



右手に意識を集中させ、剣を取り出す。

それを見ていたモンスター達は、


「キャー!」

「化け物っ」

「キモイ」


罵声を飛ばしてきた。

許せない。

この場にまた奴らは、罪を重ねると言うのか。




まず手始めに、目の前で腰を抜かし、怯えた顔でこちらを見ている女子生徒に向かって剣を振りかざす。



「止めて!お願いっ!・・・・た、助けてっ!」


女は冷や汗と涙で顔をグシャグシャにしながら、必死に命乞いをしていた。

なんだ、こいつ。

人の事は見殺しにしても、自分だけ助かりたいってか?


ウザイ、キモチワルイ。


俺の事を助けてはくれなかった癖に!



「死ねよ、ブス」


真っ直ぐ剣を女に向かって振り下ろす。

左肩から右足の付け根に向かってザックリ斬った。



「・・・・ぁっ・・・・・・っ・・・・・」


まだ女は生きている、うめき声を上げながら、もがき苦しむ姿をしばらく見つめていた。

トドメは刺さない。

ほおっておけば、そのうち死ぬだろう。

息絶えるまで、苦しめ。

そして後悔しろ。



俺を助けなかった事を。


逃げ回るモンスター達の背中をバサバサ斬っていく。

たまに反撃してくる物も居たけれど、武器も持たない学生がやる事。

俺にかすり傷1つ負わせる事なんて出来ない。



「違う・・・・。こいつじゃない・・・・」


それなりの数のモンスターは斬った。

しかし、それは俺の目当ての 物 ではない。


止まる事なく、俺はモンスターを斬り続ける。


これじゃあ、ミカと同じじゃないか?って。

一緒にするな!バカ!

俺とミカは違う。


ミカは自分の為にモンスターを狩っている。

ただの私利私欲の為。

俺がモンスターを狩る理由は、ただ1つ。

真鍋さんと女王様が望む世界を作る為だ。

私利私欲の為なんかじゃない!法律を守らなかった、奴らが悪いんだ!




「うわあっ!あああっ!!!」


左手を切断され、のたうち回る物の頭を踏み付けた。


「おい、藤井達は何処に居る?居場所を教えろ」


質問したのに、



「あぁっ!た、助けてくれっ!!!!」


物は必死に命乞いをするだけ。

答えようとしない。



「役立たず。なら、もっと苦しめ」


もう片方の腕も切断した。

更にのたうち回る物。


しかし、これだけじゃあこいつは死なない。

更に、肺に剣を突き刺す。

肺を破れば、そのうち全身に酸素が回らなくなり、死ぬだろう。


トドメは刺さない。

楽に殺してたまるか。

全員苦しませてから死なせる。



さて、次は誰を殺そうか?


廊下には血で水溜りが出来ていた。

ピチャイチャ音を立てながら、そこを歩く。


何処に居るんだ。

久しぶりに早く会いたいよ。

早く討伐しないと。

奴らが、また誰かを傷つける前に。


無造作に、モンスターを狩りながら階段を登った。

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