第92話お友達 6
感想?そんな物なんてない。
だって、会ってないんだから。
「あぁ・・・・・、別に普通だよ・・・・・」
適当に流し、黙々と飯を食う。
「涼が照れるなんて珍しいな。そんなに嬉しそうな顔、初めてみたよ」
勝手に俺が家族と会ったと思い込み、そして喜んでいると決め付ける。
なんなんだ、こいつは。
昨日公園で野宿した俺は、完全に疲れきっていた。
それなのに、嬉しそうに見えるなんて、ね。
「へぇ~、ママに会いにわざわざ家に帰ったんだ~!気持ち悪っ!」
トレーを右腕に乗せ、器用にテーブルに運ぶミカの姿がそこにはあった。
昨日とは打って変わり、顔が歪む事もなく、平然とテーブルまで辿り着くと、勢いよく、朝飯を食い始める。
「あれ?もしかして・・・・・」
嫌な予感・・・・・。
もしかして、俺が居ない間に、ハヤトの野郎がコッソリミカに痛み止めを飲ませたとか?!
「ハヤト!お前!真鍋さんの言いつけを破っただろ!
リーダーの俺に許可もなく、勝手にミカに痛み止めを飲ませやがって!」
椅子から立ち上がると、ハヤトの胸倉を勢いよく掴む。
許せねぇ!!!リーダーである、俺に許可を取らず、勝手な行動を取ったコイツが!!!
そんな俺の姿を、マリアはチラっと見ると、すぐに目をそらした。
やっぱり彼女は、俺のやろうとしている事を理解してくれてる。
だから、止めようともしない。
良いパートナーだ。
「・・・・・朝から、ウザ過ぎ。なんなの?その思い込みは・・・。
痛み止めなんて飲んでないし。被害妄想酷すぎ。
これだから、根暗は嫌!」
と呟きつつ、ミカも俺を止めようとする事なく、ガツガツ朝食を食べる。
なんなんだ?この女は。
お前が原因で、俺とハヤトがこうなった事に気づいてないのか?
すると、掴まれているハヤトが、弁解をし始めた。
「違う!飲ませてなんてない!第一、痛み止めが何処にあるのか?わからないし。
食事を大量に取れば、痛みが止まる事に、昨日の夕食の時気づいたんだ。
それ以来、ミカは一睡もする事なく、食事を取り続けている。
今も一生懸命に食事しているのは、そのせいだ」
なんだ?その言い訳は・・・・!
と、最初は思っていたけれど、よく考えてみれば、痛み止めはコートのポケットに入れたまま、持ち歩いてる事を思い出した。
なんだ、勘違いか。
でもこいつらに謝るなんて、絶対に嫌だ!
俺は英雄になる男。
こいつら雑魚に謝るなんて、プライドが傷付く。
「へぇ~、そうなんだ」
勘違いした恥ずかしさがあったけれど、それを悟られるのも嫌だ。
平然を装い、ハヤトから手を離すと、自分の椅子に座り朝食を再び食べ始める。
「ったく、勝手にこんな身体にされたせいで、こっちは一睡も出来ずに、
ひたすら食べてんのよ?有り得なくない?!
まったく、真鍋と女王の野郎め、いつか殺してやる」
ブツブツと文句を呟くミカ。
なんだって?俺はこの身体にしてくれた事を満足しているというのに、
それを愚弄するつもりなのか?!
「ミカ、その発言は法律違反だ。
今は特別見逃してやる。
でも、次にまた同じ事を言った時は、容赦なく討伐する」
そう言い放つと、席を立った。
気分が悪い。
こんなクソ女の食事するなんて反吐が出る。
「・・・・・なんか、涼変わったよな。
以前は、あぁいう人じゃなかったのに・・・・・」
背後から、そんな声が聞こえてきた。
はぁ?何言ってんの?
俺の事、何もわかってなんていない癖に。
変わった?
あぁいう人じゃなかった?
意味のわからない事を言いやがって。
俺は変わってなんていない。
むしろ、俺はやっと自分のあるべき姿に進化する事が出来たんだ。
この位置まで辿り着くまで、我慢し続けてきた。
今のこの姿こそが、俺の真の姿。
法律に逆らう奴は、皆俺が討伐してやる。
そして、お世話になった真鍋さんと女王様は、俺がこの手で守るんだ。
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