第93話過去との決別 1



「なんでコイツの学校の奴らから討伐しなくちゃいけない訳?

わざわざ学校になんて行かなくても、駅にでも行けば、人なんてゾロゾロ居るんじゃないの?」


両手にパンを抱え、ムシャムシャ食いながら、ミカがぼやく。

こいつのこの食欲は、なんなんだ?

食えば痛みが無くなるとか言ってたけど、そこまで食う必要があるのか?



「真鍋さんの指示だからさ。

それに、どんな風に討伐するか?まだ決めていないし、今日は様子を見つつ・・・」


リーダーは俺だっていうのに、なんとなく場を仕切るのはハヤトの仕事になっているのが許せない。

こいつら、自分の立場わかってんのか?

ったく!なんなんだよ!



「っていうか、ロボットちゃんの持ってるその風呂敷は何?

昨日真鍋から手渡されてたけど、肌身離さず持ち歩くとかなんなの?

ちょっと、見せてよ!」


ミカがマリアが大事そうに抱える包みに手を伸ばす。

すると、マリアは無言でその手を払いのけた。



「何?その態度!!ちょっとくらい見せてくれたっていいじゃない!

それってイジメなんじゃない?

アタシが見せてってお願いしたのに、見せてくれないとかどう考えてもイジメでしょ!

ねぇ!涼!こいつを討伐してよ!アタシこいつのせいで、傷ついたんだから!!」


あー・・・・ウザイ。

どこがイジメなんだよ。

自分が頼めば、皆が思い通りに動くと思っている所から、マジウザイ。

他人に見せたくない物だってあるだろうに。

そんな他人の気持ちなんて考えず、被害者ヅラしか出来ないミカの方が俺にはモンスターに見える。



「どこがイジメだよ。うるさいから、黙れ」


そう言うと、ミカは俺の事をキッと睨み、



「アンタって何様?キモイ癖に、アタシに向かってどういう口の利き方してんのよ!」


ヒステリックに声を上げる。

マジこいつ、無理。

自分の立場を理解して無さ過ぎだろ。



「俺は、ここのリーダーだ。リーダーの指示に逆らう奴は、容赦なく討伐する」


そう言うと、ミカは悔しそうな顔をしながら、黙った。

ほら、言い返せない。


勝った!あの時、俺の事をイジメていた人種を黙らせる事が出来た!

ニヤつく顔を必死に誤魔化しながら、外を眺める。

やっとあいつらを見返す時が来たんだ。

俺があいつらを 正当 に裁いてやる。

そう考えると、震えが止まらない。


あ~・・・・、ゾクゾクする。


校門を抜け、玄関の前で車は止まった。

それまでは平気だったのに、突然腹痛と吐き気が込み上げてくる。


何故だ?俺は、もうここの生徒ではないのに!

なんで、またこうなるんだよ!!

込み上げてくる吐き気を必死に飲み込む。



そんな俺の事なんて、気にする様子もなく、皆は車を降りる準備をし始める。

俺も、降りないと・・・・・。

ここで忌々しい過去と決別するんだ!

しかし、沸き起こる体調不良に出遅れた。



「お疲れ様です」


校長と数名の教師が、俺達を出迎える。

ハヤト、ミカ、マリアと車から降りていき、

最後に俺が出てきたのを確認すると、


「北条君じゃない!久しぶり、先生の事わかる?」


慣れ慣れしく、俺の肩を叩く人物。

・・・・担任だ。

俺がこの学校に通っている頃、毎日理不尽に叱ったあの女が、

何を思ったのか?英雄になる事を約束された俺の肩を叩いたのだ。



その様子を見ていたハヤトが、


「おぉ~!恩師との再会って奴か。

折角久しぶりに会えたんだ。後は僕達に任せて、思い出話でもしたらいいよ」


またお節介な事を言い始める。

恩師?誰が?

目の前に居るこの女は、俺がまだこの学校に通っている頃、

クラスの奴らと共に、俺の生きる場所を追い詰めた張本人。

討伐すべきモンスターなんだぞ?



「いや、いい。偉そうに俺に指図するな。

リーダーは俺なんだ」


ハヤトをキッと睨みつけると、ズカズカ前を歩く。

張り詰めた空気を呼んだ校長が、ヘコヘコ頭を下げながら、



「とりあえず、全校生徒はグラウンドに整列させたので、まずは一言挨拶を頂いて・・・・」


俺の後を追いかけてくる。

ミカ、マリア達もその後をついてくる。

くっくっ・・・・・・。

笑える。


この学校で排除される立場であった俺に、皆頭が上がらないなんてな。

死にたくなければ、必死で俺のご機嫌を取れよ。

命乞いすればいい。

お前達は、俺が必死で逃げても、嫌がっても許してはくれなかった。

それどころか、どんどん追い詰めていった。


だから、必死に土下座して謝っても許してなんてあげない。

だって、法律違反なんだから。

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