第65話王女 6



「何それ、ダッサイ。

魔法なんて、使いたくなければ、使わなければいいじゃない」


泣いている私の事なんて、気にする様子もなく、

目の前の子は、座ると、再び給食を食べ始める。


私も椅子に座ると、必死に涙を手の甲で拭いた。

でも、拭いても拭いても、涙は止まることなく、溢れ出てくる。



「言われなくても、使わないわよ!

私は、犬死しないんだから!」



「大丈夫よ、犬死になんてさせない。

だって、私、将来は偉大な科学者になる予定だから」



「え・・・・?」


顔を上げると、目の前の子は、真っ直ぐこちらを見ていた。



「どうしたの?聞こえなかった?

私は将来、偉大な科学者になるって。

魔法になんて頼らない、そんな世界を私の頭脳で作ってみせるわ」


力強い目。

その目力に、吸い込まれていく。




「貴女にそんな事が、出来るの?

嘘ばっかり!出来ないに決まってる!だって・・・・」


涙はいつの間にか、止まっていた。

それは、この子の言葉に引き込まれたからだろうか?




「出来るわ、絶対に作ってみせる。

だから、その時は女王の権限で、研究費用回してよね」


ストレートな言葉に、私は思わず、噴出し笑ってしまう。



「信じてないでしょ?私は、本気よ!

研究費出して貰う代わりに、貴女を国民の汚い手から守ってあげる」



まだ、この時の私達は、幼かったから。

それが、将来、現実になるとは思っていなかった。



「いいわよ。研究費出してあげる、そして守ってもらうわ。

そして、それが実現したら、私が真鍋の事を守ってあげる」


軽く交わした約束だったけれど、それは今でも私の脳裏に焼きついている。

真鍋は覚えているのか?わからないけどね。



それが、真鍋との出会い。

昔の記憶。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る