第45話討伐 1

「はい、次のモンスターを入れて」


それはまるで流れ作業のようだった。

手足を拘束された、死刑囚達が室内へ運ばれ、俺とマリアはそいつらを漆黒の翼で切り刻む。


何十、何百と討伐しているうちに、その感覚は麻痺し、躊躇う事もなく処分していった。



「お疲れ様。良くやったわ!今日はここで終わり。

私は今から、会議があるから、貴方達はゆっくり休んで」


今日の真鍋さんはいつもより増して、上機嫌だった。

しかし、口下手な俺もマリアも、その事を指摘しようとはしない。

すると、聞きもしないのに、真鍋さんは突然口を開いた。



「今日でね、死刑囚を全員処分する事が出来たの。

これも貴方達のお陰だわ!

やっと目障りなお荷物を消去する事が出来たのだから。


そうそう、今から行われる会議では、法律について話し合うの。

今の世の中って、皆法律に甘えている部分があるじゃない?

それを、ビシっと締め直してやろうと思ってね」



あまりにもぶっ飛んだ内容に、俺もマリアも更に口数が減る。



「そうなれたのも貴方達の活躍のお陰なのよ。

貴方達が居なければ、今ある法律を変えるなんて事、不可能だったのだから。


やっと女王様が望んだ世の中を、作る事が出来るかも知れないのよ?

もう私、嬉しいくって!

決まったら、すぐに報告するからね!」



そう言うと、俺達を置いて真鍋さんは足取り軽く、ドコかへと消えた。


全身血だらけの俺とマリアだけが、室内にポツンと残された。




「お風呂に入って、ご飯でも食べようか」


俺のその言葉と共に、二人で無言で風呂場へと歩く。

お互い、喋るタイプではないけれど、似ている箇所が多々あり、気を使わなくて良い分、楽だ。



男子風呂へ入ると、全身に絡みついた、モンスター達の血液を洗い流した。

どんなに洗っても、手についた血の生臭い臭いは消える事はない。


しかし、俺はその臭いを特別嫌っては居なかった。

だって、人間の害となる物達を消し去った臭いなのだから。



俺より、優秀だと言われるハヤトには出来ない事を俺はしている。

俺は、ハヤトより、勝っているんだ。


食堂へ行くと、すでにハヤトとミカが食事をしていた。

奴らはまだ、実戦デビューをクリア出来ていない。



「お!涼!こっち!一緒に食事しないか!」


俺の存在に気づいたハヤトが、そちらへ行くよう、手招きをする。

隣に座っているミカは、露骨に嫌な顔をしていた。


・・・俺だって、ミカの顔みながら飯食うの嫌だよ。

露骨に避ける事も出来ず、俺は渋々夕食を載せたトレーを持ち、ハヤト達の元へと歩いていった。




「お疲れ!・・・・その元気?」


ハヤトとは、一緒に実戦デビューした時以来、顔を合わせたのは初めて。

なんとなく、お互い会話がギクシャクしている。



「元気だよ・・・・うん」


なんて返事したらいいのか?わからず、会話は弾まなかった。

すると、ミカが



「っていうか、聞いてよ!

この前、アタシ!実戦デビューしたんだけど・・・・マジ有り得なかったんだけど!」


怒り始める。

多分・・・・怒っている理由はなんとなくわかっていた。

ミカとハヤトは、俺達とは違うから。

きっと、アレが原因だ。



「真鍋がモンスターだから、倒していいのよ~! とか言って、連れてきた奴ら・・・人間じゃない?

もー!!信じられない!!

あの女、アタシに同じ人間を殺せって言うのよ?!

信じられる?! 殺せるわけないじゃない!!

殺すのを躊躇っていたら、あの女、アタシになんて言ったと思う?

この役立たず って言ったのよー!!

本当、マジむかつくから!!

あの女こそ、人格崩壊したマッドサイエンティストじゃん!!」



やっぱり、そんな事だろうと思った。


真鍋さんは確かに、ぶっ飛んだ部分はある。

けど、俺は彼女の事をマッドサイエンティストとは思わない。


今まで何やってもダメで、良い所なんてなかった俺を、ここまで立ち直らせてくれた人だから。

勇気を与えてくれた英雄 と、思っていた。

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