小夜曲集

今村広樹

探偵さん

バタン!

T警部けいぶがドアを開けると、少年そのたいろいろたんとうのいそうろうが疲れているのか、寝ている横で、

探偵ずのうろうどうしゃが、ダージリンティーを飲んでいた

『なんだい、騒がしい』

『大変なんですよ!今日も訊きたいことがあるんだ!』

『君ね、寝ている人間がいる近くで、よくそんな大声を出せるね』

『あ、すみませんでしたー!』

『…いや、もういいか』

探偵は嘆息した

T警部のうきんは、この街の警察に勤めているのだが、正直おつむの方が、よろしくないので、難事件があると、探偵に相談する(その程度にはわきまえている訳だ)

ただ、この探偵には悪い癖があって…

話を続けるとT警部は事件のあらましについて、話始めた

『いやね、A地区のアパートで店子じゅうみんが殺されたんですよ

ケチ突く張りで、大家かんりにんや他の店子たちにも相当恨まれてましてな

最後に目撃されてから、第一発見者の宅配業者メッセンジャーボーイが死体を発見するまで、目撃者はおらず、

また、部屋はあいたままでした

で、犯人は誰だと思います?』

『なんだい、その藪から棒な訊き方』

『すいませんね、早く訊きたいもんで』

探偵は、深いため息をつくと、おもむろに話し始めた

『君は、群衆の人という短編をしってるかね?』

『いえ』

『そりゃそうだ、君が読書好きとは聞いた事ないからな

エドガー・アラン・ポーの短編さ

人の観察が好きなやつが、老人を追っていくだけの』

『それが、この事件と何の関係が?』

『つまりね、犯罪の要素というのはということ』

『?』

『第一発見者の宅配業者を調べてみたまえ

どうせ凶器を投げる機会がなかったとかで、持ってるはずさ』

『ああ、なるほど!』

T警部が大声でいう

『さっそくそいつを調べましょう!!』

と、少年が起きて、不機嫌そうに言った

『あ、ああすまん』

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