第24話外れぬ首輪 4

何着か着替えを鞄に詰め込み、財布、携帯と鍵を握りしめると、部屋の扉を勢いよく開いた。

扉にしがみ付いていた母は、その勢いに驚き廊下にしりもちをつく。


私はそれをチラリと横目に見ると、何も言わず靴を履き家を出た。




「何処行くの?!話はまだ終わってないんだからね!!!」


母の叫び声が聞こえたけど無視をし、扉を閉める。

急いで車のエンジンをかけると、発進させた。

心臓はバクバクなっている。



怖い!助けて!岡野さん!



運転中も眩暈がしそうな感覚に追われた。

母に逆らった。

もう2度と家には帰えれない。

もし帰ったら、母に半殺しにされる。

荷物を持って勝手に家を飛び出した私は、きっと失踪した父と同罪。


もう帰る場所はどこにもない。

私の味方は岡野さんしかいない。



岡野さんは家の前に立っていた。



「待ってたよ。おかえり。今日からここがマイの家だ」


彼にギュっと抱きしめられる。

私も彼の背中に手を回す。








「なぁ・・・・・・中に出していいよね。僕たち結婚するんだから」


「マイ、愛してるよ」


「俺は愛してるって、簡単に言えるタイプの人間なんだ」



疑うなんてしなかった。

私はこのまま、彼と幸せに暮らしていけると思ってたの。



今思えば、なんで疑わなかったんだろ。

彼の嘘をつく時の癖。



最初から気付いてたのに、私はそれを見て見ない振りをした。

実家から逃げ出したい。

そればかりを考えていた、バカな私。


彼の家からバイト先の居酒屋に通う日々。

母から携帯に着信やメールがあったけど、全部無視をした。


やっぱりお前は父親に似て白状な女だ。

×2と暮らして幸せになれるはずがない!

もう2度と家には入れないからも戻ってくるな!

今まで育ててやった金を返せ!役立たず!



私の事を罵倒する物ばかり。


それを見て落ち込んでは、私は岡野さんの腕の中に飛び込む。



「大丈夫、愛してるよ。マイ」


「早く赤ちゃんが欲しい。赤ちゃん産んでよ」


彼は私の事をドップリ愛してくれた。



居酒屋に姉と姉彼が乗り込み、何やらブツクサ言われる事もあったけど、それも全部無視をした。

あの人達はもう私の家族ではないの。

私の新しい家族は岡野さんと・・・・・・お腹の赤ちゃん。

まだ一か月も経っていなかったから、彼には内緒にしていたけど、もう少ししたら話すつもり。

赤ちゃんを産むにはお金がかかるだろうし、しっかり働かないと!



バイトを終え、いつもの日課である携帯のメールチェック。

彼はいつも家で何をしていたのか?教えてくれる。



いつも通り、彼からのメールが受信されていた。

さて今日は何をしていたのだろう?

メールを開くと、




To  岡野裕也

Sub 無題

Text 元嫁と一緒に暮らす事を決め迎えに行きました

   荷物は外に出してあります

   もう2度と家には戻ってこないで下さい




「・・・・え?」


意味を理解する事が出来ない。

足がガクガクする。歩けない。呼吸が乱れてる。


なんとか車までたどり着き乗り込むと、彼に電話をかける。


電話は繋がるけど、出てくれない。

何度かけても彼は電話に出てくれなかった。



仕方がないからメールを打つ。



To  大西舞子

Sub 無題

Text どうして?結婚するって言ったじゃない!

   嘘だよね?



電話には出ない癖に、メールはすぐに返してきた。



To  岡野裕也

Sub 無題

Text 元嫁の事が 忘れられませんでした

   もう貴方とは関わる事は出来ません



元嫁の事が忘れられなかった?

どういう事?

だって連絡を取ってないって言っていたー・・・・・・・・・・・・・。



私は彼のとある癖を思い出した。

嘘を付くとき、目線をそらし遠くを眺める癖。



彼から離婚歴があると聞いた時、私は彼にこう尋ねた。

「元奥さんとは連絡を取っているの?」と。


その時彼は、私から視線を外してこう言ってたっけ。

「取ってない」って。



嘘だったんだ・・・・・・・・・。

そうだよ。

嘘だったんだよ。

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