第17話隠し事 3



フラワーフェスティバルデートの前日。

彼から気になるメールが届いた。



To  岡野裕也

Sub 無題

Text 以前とてもショックな事があって 半年間毎日泣いて眠れない日がありました

   そんな時に支えてくれたのが家族でした

   私生活が充実せず ただなんとなく生きている時に 一生懸命働いている大西さんが視界に入り

   凄く気になって目で追うようになってました

   メールアドレスを交換した時 丁度会社の飲み会で 大西さんが働く居酒屋さんに行くことになって

   ここで声をかけないと絶対に後悔すると思って 思い切って声をかけました

   今は声をかけて良かったと思ってます

   これからいっぱい2人で思い出を作っていきたいと思ってます

   一緒に幸せになりましょう!

   では明日 ○時に迎えに行きます

   おやすみなさい

 

      


今までみたいな日常生活の何気ない話を送るのではなく、意味があるメールの内容。

以前彼に起こったショックな出来事って何だろう。

凄く気になる。

聞いて良い話なのだろうか。

聞かない方が良いのだろうか・・・・・悩む。



To  大西舞子

Sub 無題

Text 私も過去に辛い思いをした事があります。

   今でもその事を思い出して眠れなくなる事があります。

   いつまでも過去にしばられてはダメですね。

   お互いで支えあえる関係になりたいです。




私の辛い過去。

家族を捨てて失踪した父の事。


思い出したって考えたって、もう何も変える事も何も出来ないのに。

女々しく今でも思い出しては、涙を流す事がある。



そんな私に比べて岡野さんは前を向いて歩こうとしてる。

立派だ。   




To  岡野裕也

Sub 無題

Text 明日思いっきり楽しみましょうね^^



本日最後に来たメール。

お互い苦難を乗り越えてきた者同士、幸せになりたいね。





翌日。

時間より少し前に待ち合わせ場所に向かったにもかかわらず、彼はすでに到着していた。



「おはようございます。ゆっくり眠れましたか?」


いつも通りの爽やかな笑顔。



「フラワーフェスティバルには行ったことがあるので、場所はわかります。

何処かコンビニに寄って、飲み物を買っていきましょう」


フラワーフェスティバルに行ったことがあるんだ・・・・・・誰と?

気になるけど、聞くのは止めた!

なんとなく聞いてしまって、気まずくなるのは嫌だしね。



車内でありきたりな会話をする。

何でもいい、彼について何か情報を知る事は出来るのだろうか?



「実家は自営業をしています。僕には兄が1人いて結婚してます」


「今は兄と兄嫁が両親と一緒に仕事をしてくれてます。僕はたまに帰るくらいですね」


「うちの両親は忙しくて、夕食は加ってきたお惣菜ばかりでした。

だから僕も濃い味付けが大好きで・・・・」



家族構成、好みの味付けについて聞く事が出来た。

彼は家族と仲が良いんだー・・・・・・。

お兄さんも無事に結婚しているみたいだし、羨ましい。


それに比べて、うちの家庭はー・・・・・。



「大西さんは兄弟とかいますか?」


「えっ・・・・」


彼が私に何かを問いかけてくるなんて、珍しかった。

私について興味を持ってくれたのは嬉しいけど、それは答えにくい話。



失踪した父。

向上心がなく、誰かを否定する事しか出来ない母。

無職のヒモを養う姉。

そんな家族にバカにされ、何の自慢も持ち合わせていない私。



彼とは違う。

私は何もない。

話そうか?迷った。

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