第14話疑惑 5
「今からドライブがてら僕の職場を教えようと思ってる。
少しでも僕の事を知ってもらいたいんだ」
初対面なのに職場を教えてくれるって事は、私との関係は本気って事だよね?
「この道は穴場なんだ。信号もないし警察も居ないから、スピード出し放題だよ」
そう言うと彼はアクセルを思いっ切り踏む。
メーターはあっという間に100㎞を超す。
「スピード違反で捕まる事もあるけど、それは仕方がないんだよ。
スピードを出せば目的地まで早く着くから」
捕まった事あるんだ。これはガッカリ情報。
「休みの日は何もやる事がなくて暇だよ。ギャンブルもやらないしね」
ギャンブルやらないんだ!それは嬉しい。
「一緒に出掛けてくれる人も居ないから、ずっと家でゴロゴロしてるしかない」
休日はお友達と出かけたりしない人なのかな?
「今の職場は少し家から遠いんだけど給料は良いし、職場の人達もいい人達ばかりだから定年まで働きたいって思ってる」
給料が良いんだ。
高そうな服着てるね。そういえば。
「実家は農家で○○町に高校の時まで住んでた。高校は○○高だったから片道1時間30分かかったけど、3年間皆勤賞で通ったよ」
「部活は卓球部だった」
「高校卒業後は専門学校に行って、整備の免許を取ったよ」
「整備の仕事は5年働いて辞めた。給料安いし」
「次の所は半年働いて辞めた」
「それで今の所で働き始めて5年。一番給料も良いし働きやすいよ」
やっぱりメールと会うのとでは、知る事が出来る情報の数が違う。
ポツポツと色んな情報を知る事が出来た。
でも一番聞きたかった「今までに付き合った人数」や「元彼女」については何も聞けなかったのは残念。
大きな建物の前で車は停車した。
「ここが僕の働いている会社です。少しずつでも、僕の事を知ってもらいたいです」
「立派な会社ですねー・・・・」
「僕のやっている仕事は、僕以外に出来る人が居なくて。
元々は他の人がしていたんだけど、その人が上手くやる事が出来なくて僕が代わりにやる事になって。
社長に信用して貰っていて、この仕事に誇りを持っていてー・・・・・」
彼が仕事について熱く語る。
私は内容よりも、彼が一生懸命語る姿に見とれていた。
こういう関係って良いなぁ。
自分の事について熱く語るって素敵だと思う。
少し会社の事について教えて貰った後、再び車は発進。
「何処のラーメン屋に行きましょうか?美味しい所がいいなぁ~」
すでに会ってから1時間経過。
まだ過去の恋愛について一切触れていない。
「ラーメン屋は、ここにしましょうか」
彼オススメのラーメン屋に決め、そこに入る。
注文しラーメンが来るのを待つ。
傍から見たらこの姿は、カップルっぽいのかな?
ラーメンが届き2人で食べ始めた時、私は彼に対して気になる所を見つける。
私の分の箸を用意し手渡してくれた所は、「気配りが出来る人なんだな~」程度にしか思っていなかった。
しかしその後、グラスに水が無くなれば補充し、何も言わず周りをキョロキョロ探すとティッシュを無言で手渡してくれたその姿に私の中である疑惑が浮かび上がる。
もしかしてこの人、子供が居る・居たんじゃないのかな?
バイト先である居酒屋でお客様を観察している時、子供が居る男性と居ない男性では、周りに対する気遣いの出来る・出来ないに差があった。
彼は31歳にしては、気が利きすぎている。
子供が居る・居たから、彼は過去の恋愛について語ろうとしないのかな。
・・・・・・・考え過ぎ?
食べ終わると、私達はお店を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます