第23話

 駐車場から自分の部屋へ向かう途中、顔を上げるとそこから自分の部屋のドアが見える。エレベーターに向かって歩きながらそのドアを見ていると、ドアの隙間の辺りが何故か霞んで見えた。疲れているせいかと思ったが、何とも言えない胸騒ぎに煽られて部屋へと向かう足取りは早くなった。


 駆けだしたい気持ちを抑えながら乗っていたエレベーターを降り、早足で部屋へと続く廊下を進んだ。部屋の前に着いてみると、火事かもしれないという予感が真実となってしまった現実に直面して呼吸が苦しくなった。


 目の前ではドアの四方の隙間から部屋の内側から発生しているであろう煙が薄く漏れ出ているという緊急事態が発生していた。突然の火事にドアを開けることを躊躇したが、もしかしたら消火器で消すことができる状態かもしれないと、思い切って鍵を差し込んで恐る恐るドアノブに触れてみた。しかしドアノブはいつもと同じように金属特有の冷たさを保ち続けていた。ドアノブが握ることのできる温度であるなら玄関先で何かが燃えているわけではないということがわかった。それならば部屋の奥の方で何かが燃えているのだろうか・・・。


 家を出る前に部屋の中で火を使った記憶はない。電気コードか何かがショートでもしたのだろうか。滅多にないことだが、自分ではそれぐらいしか煙が出るほどの火事に至る原因を探ることはできなかった。

 

 

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