三日月恋慕

千秋静

第1話

 小さめのペットボトルに半分ほど貯まった女の爪を眺めていたら、あっという間に一時間が過ぎていた。

 

 カーテンを開けた部屋の窓から見える青く晴れた空にペットボトルを掲げてみると、三日月形の濁った白い爪の色がたくさん浮き上がって見えて、それが堪らなく美しいと思った。仕事も生活も何もかも捨てて、この爪を一日中見つめながら、そのまま死ぬことができたらどれだけ幸せだろう。


 ペットボトルを振ってみると、カラカラ・・カサカサ・・と、愛おしい音を出す。音は愛らしいのだが、音と共に爪の持ち主の顔がチラチラと浮かんできてしまって少し不快な気分になった。俺は爪の持ち主の女になど全く興味がなかった。あくまで爪を愛しているから集めているのであって、爪の持ち主を愛していたから集めていたわけではない。


 ただただ「女の爪」が好きなのだ。それだけなのだ。




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