脱げない鎧

ジェリージュンジュン



* * * *





「ヒャァァァッッッッハハッハッハッァァァァァァーーーー!! もう、マジで最高だぜぇぇぇ!!!!」

「あぁぁぁぁぁぁ! 気持ちいいぃぃぃぃぃぃ!! 俺、中に出しちゃったかもぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「ハハッ! バァァァァカ! この子がかわいそうだろ、ちょっとは気を使えよ!!」



男二人は高笑いをしながら、少し土で汚れたジーパンを履き始めた。

私の名前は、波多野ユウコ。

社会人2年目の24歳。

海が近くの街に住む、いたって普通のOLだ。


そして、今私が捕らわれているこの場所は、勤め先の会社から、最寄り駅までの間にあるひっそりとした小さめの公園。

時間は夜の9時。

メイン通りから離れているため、周りに通行人の気配はしない。

街灯は、チカチカと点いたり消えたり。

なんとも、たよりない光を提供してくれていた。



まるで異空間――



大きなワゴン車でさらに視界を遮られているため、そこは、ひとつの隔離された空間を作り出していた。


「う……うぅ……」


うずくまる。

泣きながらうずくまる。

ポロポロと大粒の涙がとめどなく溢れてくる。


「う……うぅ…………」


お気に入りだった淡い黄色のブラウスは、ボタンがいくつも取れ、尚且つ、その色が認識できないほどに泥だらけ。

少しでも肌の露出を無くそうと、ビリビリに破けた少ない布切れで、必死に体を守ろうとする私がそこにいた。


誰もいない。

助けはこない。

月の光と、ほのかな街灯の灯りが、ただただ、ガタガタと震える私を照らしていた。


「あのね~」


そんな私の顔を、さらに身を屈め下から覗き込み、男はニヤニヤしながら言った。


「今日のことは誰にも言っちゃダメだよ~。もし喋ったらこの携帯で撮った写真もネットにばらまくし……あとね……」


絶対に、と男は言った。





「殺すから」





バァァァァン!!――――






そのたった一つの言葉は、破壊力抜群。

まるで心臓を銃で撃ち抜かれたような衝撃を私に与えた。


なんで??

いったい、なんで??


ただ、ただ、いつものように会社から帰っていただけなのに。

いきなり、人通りの少ない路地で、車に連れ込まれて――――

こんなことに巻き込まれるなんて。


「う……うぅ……」




レイプ――――




それは、日常の何気ない夜に起こった忌まわしい出来事。

これからの私を『ある物』で、がんじがらめに縛り付けた事件。

その『ある物』とは。

そう。





恐怖心――――










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る