第57話 新たなる幻の音ゲー出現!?

「重圧の賛美歌!重テーム!」


コンマイ国の城壁に近付く魔物の大群は塀の上に立ったメロディーの歌によりその場に蹲る。

彼女の歌の真髄を垣間見たコンマイ国の兵士達は歓声を上げ身動きのとれなくなった魔物達に飛び道具を放つ!

ある者は弓で、またある者は投擲で石や槍が雨の様に魔物へと降り注ぎその体を貫く!

まさに一方的な蹂躙!

ガム国に戦争を仕掛けられたのならば勝ち目は一切無いと人間の間で語られているそれが今味方として共に戦っている!

しかもコンマイ国の住人は音ゲーにより市民すらも規格外な魔力を持っている!

放たれた弓や石や槍には勿論魔力が込められ一撃で魔物に致命的なダメージを次々と与えていた。


「今よ!開門!!」


コンマイ国の門が開かれて中から防具を身に着けた者達が一斉に駆け出す!

彼等の目的はただ一つ!

魔物が死んで消滅した後に残る魔石と放たれた矢や槍の回収であった。


「次来るぞ!急いで戻れ!」


メロディーの声が響き出ていた者達は一斉にコンマイ国の中へと駆け戻る!

そして、また篭城からのメロディーの歌で動けなくして飛び道具で一方的な虐殺。

卑怯、そう感じるかもしれないがそれも仕方ないだろう。

既に戦争が始まり半日が経過していた。

メロディーの歌も一定感覚で休憩を挟んでいるのでまだ歌えるがそれには勿論限界がある。

見た目では一方的にコンマイ国を攻めた魔物を皆殺しに出来ているのだが問題なのはその数であった。

コンマイ国の兵士や冒険者、そしてガム国から来ているメロディーとその親衛隊合わせて1500人に対して魔物の軍勢は軽く10万を超えているのが報告されていた。

彼等は気付いているのだ、今まで一方的に倒した魔物はほんの極一部で雑魚ばかり・・・

それは回収された魔石を見れば直ぐに分かった。


「くそっ・・・このままじゃ・・・」


誰もが気付いているが口には出さない、これまで襲い掛かってきた魔物は全て地上を歩く事しか出来ない魔物ばかり・・・

空からや地面の下を進む魔物は一切見かけていないのだ。

現在倒した魔物の数は500程度、被害は一切無いと言ってもお話しにならないレベルであった。


「そろそろ時間なんでメロディーさんは一度下がってください!ここからは私達が戦います!」

「分かったよ、それじゃあ無理はしないようにね!」


メロディーの後ろに立っていたのはコンマイ国の冒険者達、先頭に立つのは先日結婚をしたばかりのナーヤとズーであった。

彼ら冒険者達も音ゲーにより普通の人間とは隔絶した魔力を所持しており各々が個々で魔物と渡り合える戦力を有しているのだ!

これもコンマイ国王と国王の元へ行き和解をして協力を得れたアイの作戦であった。

コンマイ国の戦力をガム国メロディー率いる部隊、コンマイ国の冒険者達、コンマイ国の兵士の3つに分けてローテーションで戦う作戦を立てていたのだ。

相手は無限に湧き出て来る様な冗談みたいな数が相手なのである、そこで考え出されたのがこの戦術であった。

3つのグループが8時間交代でコンマイ国を守る残業なしのホワイト企業作戦であった。


「行くぞお前達!無理は絶対にせずに深追いも厳禁だからね!」

「「「「うぉぉぉおおおおお!!!!」」」」


開門されたコンマイ国の城門から駆け出す冒険者達は直ぐに陣形を作り横並びに並ぶ!

隣の者が左右を守る事で前方の敵だけを倒せば良い形にする作戦であった。

そして、彼等が飛び出すと同じ位のタイミングで魔物の種類が変化し始めた。


「あちらさんも次の部隊ってか?!ならこちらもそろそろ行くぜ!」


誰かがそう叫び一斉に盾を構える!

戦闘を走るのは今までと同じゴブリンやオークといった魔物であったがその後ろに並んでこちらへ向かってきているのは虫の魔物であった。

本来であれば共闘なんてありえない組み合わせであるのにも関わらず同士討ちをする事無く真っ直ぐにコンマイ国へ向かって走ってくる・・・

前に出る冒険者達が盾を構えその上を飛び越えるように冒険者達の魔法や矢が放たれる!


「打て打て!どんどん打ち込めぇえええ!!!!」


ナーヤの声が響き冒険者達から次々と攻撃が繰り出される!

空からの攻撃を掻い潜り冒険者達の元へ近づけても並ぶように構えられている盾に阻まれ、隙間から別の冒険者が槍で攻撃を仕掛ける!

これには流石のゴブリン達も苦戦を強いられた。

幸いなのは死んだ魔物はその場に魔石を残して消滅する、死体が残らないという事は物凄く重要な事でもあったのだ。

対象の魔物の生死の確認とそれを肉盾にしたりする魔物の行動を抑制できるのだ!


「皆!あの虫の魔物には十分注意しろよ!」


誰もが虫の魔物に気を張らせる、それはそうだろう本来虫と言う生き物はとても強く生命力が高いのである!

虫は数センチしか無いその体でも自身の数十倍の高さまで跳躍したり自分の体重の何倍もある物を持ち上げたりする。

それが意味するのは・・・


「上から来るぞ!気をつけろ!!!」


並んだ通る隙間がギリギリ無い盾を飛び越えようと跳躍し始めてきたのだ!

だが・・・


「私らが出ている時でなければ成功したかもしれないけどさ・・・残念でした!ファイアーショットを一斉に放て!!」


再び盾の後ろに居た魔法の使える冒険者達がナーヤの声掛けに反応して一気に飛び上がっていた虫の魔物たちを焼き払う!

防衛をメインに命大事にで戦う冒険者達、残り7時間を必死に戦うのであった・・・






一方その頃、相変わらず包帯グルグル巻きのロクドーは寄り添うエミに声を掛けた。


「エミ、多分メロディーさん1人じゃ大変だろうから協力しに行ってやってくれないか?」

「ですが・・・」


そこで口ごもるのは仕方ないだろう、他の冒険者達と違ってエミは戦いの経験が殆ど無いのだ。

自分1人を戦場に向かわせた所で役に立てるとは到底思えなかった。

だがそれを打開させる方法が在るのだとしたら・・・


「大丈夫、今日は大分と調子が良くなってきたから今なら1回くらいなら出せる!」


そう言ってロクドーはベットから包帯だけにしか見えない片腕を外へ出して両目を瞑る・・・

ロクドーの腕に魔力が集まり渦を巻く。

そしてあの言葉が放たれた!!!


「スキル『創造具現化』を発動」


ロクドーの体から放出された魔力が固まりとなり徐々に形を作り上げていく・・・

それを目をまくるして見詰めるエミは形状から予想を立てていた。

筐体の前に置かれた黒いマイク、それに向かって行う事といえばひとつしか無いだろう・・・

エミは大きな台車を奥から引っ張り出してきてそれにその音ゲーを乗せる。

音ゲーで溢れるほどになった魔力を纏わせて身体能力を飛躍的に高めたエミは軽々とその筐体を持ち上げて台車に乗せていた。


「頼んだぞエミ」

「うん、分かった。ロクドーさんも早く良くなってね!」


そう言ってロクドーが出現させたその音ゲー『ドリーマーオーディション』を持って町の門目指して駆けるのであった。

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