第49話 GAM-DDR

コンマイ国の西に広がる平原に集団の影が迫っていた。

その人数は300を超え先頭には一際目立った格好の女性が屋根の無い馬車に優雅に座っていた。

彼女こそガム国女王のメロディーである。

どこぞの演歌歌手の様に豪勢な装飾が施された服装のままコンマイ国が視界に入ると立ち上がって叫んだ!


「我がガム国の歌唱力はァァァァァァァアアア 世界一ィィィイイイイイ」

「「「「世界一ィィィイイイイ!!!!」」」」


彼女に続き兵士達の雄叫びが響き渡る!

他国を攻めるのに300人程度で攻めるのは本来ありえない。

だが彼女の歌が在ればそれは可能となるのだ。

相手を誘惑し魅了し指揮を下げて操るその歌の前に戦力差などあって無いようなものなのだ。

声さえ届けば彼女の力を防ぐ方法は無く耳栓をして戦おうとしても自軍を強化したり回復したりする事が出来るのだ。


そして、コンマイ国から数百メートルの距離まで近付いてガム国の兵士達は横に一列に整列する。

1台だけ前に出た馬車から降りるメロディーはコンマイ国の外壁に向けて口を大きく開く!


『ぼえ~~~~~』


それは声の波であった。

メロディーの口から発せられた音の波はコンマイ国の外壁に到達し振動により地震の様に外壁を揺らした!

小手調べとメロディーは先制攻撃に打って出たのだ。

その振動は門にも影響を及ぼし外壁とは違って木で出来た門は音が反響するたびにヒビを広げていった。


「ふふふ・・・さぁ音ゲーを我が国の物にする時が来たのです!全軍、突撃!」


メロディーの口上と共に兵士達が前へ歩みだす!

だがその時であった。

メロディーの歌の効果で身体能力などが強化され超人化していた兵士達の歌の効果が突然途切れたのだ!?


「なっ?!」

「これは一体?!」

「そんなバカナ?!」


ここまでの移動すらも歌の力で疲れを忘れ肉体を強化されていた兵士達は自身の体に起こる変化に驚きの声を次々と上げる。

メロディーはそれに驚き再び上書きとして能力向上の歌を歌いだすのだが・・・


「な・・・なんで・・・歌の効果が・・・」


メロディーがうろたえるのと同時にコンマイ国の門が開かれ兵士達が一斉に飛び出す!

ガム国の兵士達は返り討ちにしようと武器を構えるのだが・・・


「だ、駄目だ?!こいつら強い?!」


戦い始めると同時にあちこちで倒され捕まる者が続出する!

本来であれば強化された身体能力で戦える上に相手は歌の力で士気は下がり一方的に蹂躙出来る筈なのに一方的に崩されていったのだ。

そこに在ったのは確実な実力の差であった。

そもそもコンマイ国の住人は音ゲーにより基礎魔力が魔族クラスにまで上昇しているのだ。

その為、身体強化魔法を駆使して戦う兵士相手にたかが300程度の兵力では相手にもならなかったのだ。


「う、嘘よ?!私の歌が・・・なんで?!なんでよぉおおお?!?!」


あっという間に周囲を囲まれて身柄を拘束されたメロディー。

本来であれば歌を歌えば相手を操り同士討ちをさせる事が出来る筈なのにその歌の効果が一切発揮されなかったのだ。

自分は歌が在る限り捕まる事はありえない。

そう慢心していた為にガム国は完全敗北を味わう事となったのであった。









「本当にこれのお陰なんでしょうか?はぁ・・・はぁ・・・」

「うむ、皆の者のお陰で我がコンマイ国は今回の防衛に成功した」


外壁の上に設置されたそれの前に立つ数名の女性と兵士の1人が会話をしていた。

その前に設置されたそれこそがロクドーがガム国の歌対策の為に設置した物である。

その名も・・・


『DANCING DREAM REVOLUTION KARAOKE MIX』


である!

通常のDDRとは違い片方の4パネルのみの踏む台の前には小さなカラオケ用のモニターが在りそこに歌詞とDDRのゲーム画面が表示されていたのだ。



※DDR KARAOKEMIX

通称○AM-DDR

1999年頃にカラオケBOXに設置されたDDRが歌いながらプレイできると言う夢のゲーム機である!

譜面は自動生成され曲を選ぶとその曲のBPMに合わせて矢印が毎回違うパターンで上がってくるのでそれを踏んでプレイできる!

カラオケ収録曲であれば全てプレイできるのでその収録曲は実に2000曲OVER!?。

一応書いておくとメドレー曲やリンダ○ンダを代表とする曲の速度が変わる曲では矢印の速度がおかしくなったりします。

ちなみに2台接続する事でダブルもプレイできるらしいのだが日本中でダブルプレイが体験できる環境が存在したという方向は無し。

個室に2台置くより2部屋に1台ずつ置くよねそりゃ・・・

実は続編の2ndMIXも発売されておりMANIACレベルの変わりにSUPERと言うレベルが在ったりもする。



「まさかあれ程世界最強といわれたガム国がこれ程簡単に無力化されるとは・・・音ゲー恐るべし!」


兵士がそれを見ながら呟くが実はコンマイ国の住人の魔力量であれば歌の力に抵抗する事も可能であった事を彼等は知らない・・・

ガム国の兵士達は牢屋に入れられメロディーはコンマイ国王と再び呼び出されて不機嫌になっているロクドーに前に連れて来られていた。


「ガム国のメロディー女王だな?」

「くそっ・・・なんで私の歌が・・・」

「そなた何故我がコンマイ国を攻めてきた?」

「・・・」


その言葉にメロディーはロクドーの方を見る。

彼が音ゲーを生み出したと言うのはスパイから聞いていた。


「あんたが・・・あんたが何かやったんだな?!」

「俺?まぁ何かしたっちゃ何かしたけど・・・とりあえずもう捕まってるんだし大人しくした方が良いよ」

「くっ殺せ!」


メロディーのその言葉にロクドーとコンマイ国王は顔を合わせる。

そして、ロクドーは口にする・・・


「その言葉は女騎士じゃないと萌えないんだよ!」


今度はコンマイ国王もロクドーに(えーーー?!)って顔を向けるのであった。

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