僕と一緒の所まで堕ちてきて

綾織 茅

姉様は僕のモノ

1



 ガチャン




「ジョエル、お願い、やめて」




 ガチャリ




「ね?やめよう?こんなこと、やっちゃいけないわ?」




 綺麗な泣き顔だね。


 リアお姉様。


 僕の最も好きな顔。




「私達、双子でしょう?」




 だからだよ。


 双子だからこそ、何でも共有したいんだ。


 大好きな姉様の全てを。


 この僕も。




 ううん。


 共有すべきなんだよ。


 だってあの女のお腹の中では何でも共有してたんだから。


 過去も現在も未来もぜーんぶ。


 それが双子に生まれた運命なんだ。



 あぁ、これを言ったらもっと綺麗なその顔を歪めてくれるかな?


 くれるよね?


 言っちゃおっと。




「姉様、僕はね…」




 ごくりと唾を飲み込んで、姉様が僕の次の言葉を待っているのが分かる。




「姉様のことが大好きで……








……………大っ嫌い」




「っ!!!」




 姉様、泣いてる姿も綺麗だね。


 それとも気付かなかった?


 僕が姉様のことをそう思ってるの。


 可愛さ余って憎さ百倍ってヤツかな?




 だって姉様、僕よりも幸せになるんだもの。


 一人だけ家族と暮らして、一人だけ皆に可愛がられ愛されて、挙げ句の果てには恋人まで作ったって言うじゃない?


 定時に来る身の回りの世話係の男に聞いた時、思わず殺しちゃったよ。




「ジョエル……ごめんなさい、ごめんなさいっ!!」




 何で謝るの?


 姉様は何もしてないじゃない。


 まぁ、逆に何も知らないっていう罪はあるんだけどね?




 やったのはあの男達。


 憎い憎い、何度殺したって足りないくらい憎い僕達の両親。


 まぁ、もういないけどね。


 僕がから。


 欲の塊の味がしたよ。




「ジョエル…あなたは、人であることを捨てたの?」


「………………さぁ?どうだろうね?」


「本当に“死神”になってしまったの?悪魔に心を売り渡してしまったの?」




 姉様、それは愚問だよ。


 僕は生まれたその時から人ではなかったんだから。


 だからこそ、姉様と同じ無償の愛とやらを受けられなかったんだから。




 悪魔に、というならそうかもね?


 天使よりマシだと思うよ?




 この世に神はいない。


 いるならそれはただの偽善者。


 だって神がいるなら、僕はとっくに手に入れていたはずだもの。




「ジョエル、もうあなたは自由なの。自由なのよ?」


「うん。そうだね。だから今度は姉様の番だよ」


「……え?」




 ほら!!


 また僕の好きな顔。


 絶望に満ちた顔。


 姉様は綺麗だから、今まで見てきた中で一番好き。




 あの男達の絶望の顔は滑稽だっただけ。


 見ててすぐに飽きちゃった。




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