第119話殺し屋たっちゃん


「知ってる?殺し屋たっちゃんって?」


仮眠室でコタツに入ってる太郎がアイスを食べている春男に聞いた。


「確か、都市伝説だろ?実際にはいないだろ。」


「それが本当にいるらしいんだよ。」


春男は、アイスに夢中である。


「警察が、たっちゃんに依頼したんだとドラゴンフッシュを始末してくれって。」


「ドラゴンフッシュって妊婦ばかり狙う変態野郎だろ?」


「そう、春男ちゃん、良く知ってるじゃん。」


「それで、たっちゃんと組んでドラゴンフッシュを逮捕するのか?」


「春男ちゃん、冴えてるね。」


「警察と殺し屋が協力するなんて世も末だな。」


春男は、新しいアイスを食べ始めた。


太郎は、春男を連れてたっちゃんのオフィスに来た。


「何で俺まで来なきゃいけないんだよ!」


春男は、太郎に聞いた。


「一人じゃあ、不安なんだよ。」


そんな事をしているとたっちゃんの事務所から、カエル顔の男が出て来た。


「あんたらが、警察?」


「うん、木村太郎だけど。」


「ふーん、警察には見えないけど…。」


「ニイクラ!中に入ってもらえ!」


「はい。」


たっちゃんの声か…。


事務所に入るとソファーにロン毛の男が座っていた。


「あんたが木村太郎さん?」


「うん、そうだよ。同僚の春男ちゃんも連れて来た。」


「俺が、たっちゃんだ。よろしく。あと、健ちゃんとニイクラと山田喜一郎だ。」


健ちゃんと呼ばれた男は太郎を見つめて会釈した。


喜一郎は、ガムを噛んで太郎を品定めしていた。



「ドラゴンフッシュを釣るにはオトリを使うのが一番効果的だと思うよ。」


太郎は、たっちゃんに言った。


「オトリって言っても…。」


「大丈夫、俺が用意するから。」


太郎は、策があるような物言いだ。


「大丈夫かよ?」


春男が太郎に聞いた。


「大丈夫だよ。あれがいるじゃん。」


「あぁ、あいつか…。」


たっちゃんは、不思議な顔をした。


「そっちが出すんならこっちも出す。ニイクラをドラゴンフッシュにぶつける。」


「うん、良いけど殺さないでね。」


太郎がたっちゃんに言った。


「大丈夫。ニイクラはムチャはしない。」


たっちゃんは、太郎が気に入ったらしい。


「どんな犯罪者も確保しなきゃいけないからね。」


太郎がため息をついた。


「木村さんは、俺達とは表裏一体だな。」


「そうそう、死ねば良いのにと思う犯罪者はたくさんいるけどね…。」


「おい、太郎、それを言ったらあかんだろ?」


春男は、太郎にたしなめるように釘を刺した。



「良いじゃん。人の未来を奪うんだから。」


太郎の言葉をたっちゃんは真剣に聞いていた。


「木村さんは、死刑推進派?」


たっちゃんは、タバコを灰皿に擦りつけて聞いた。


「うん。」


「おい!」


春男が太郎の頭を叩いた。


「俺も同じだよ。でも、俺は簡単には殺さない。」


「ふーん、そうなんだ。それも良いよね。拷問しないとね。」


「初めてだ、本音を言う警察官は。」


たっちゃんは、爆笑した。


「でさ、ドラゴンフッシュはどこにいるの?」


太郎がたっちゃんに聞いた。


「さすが、俺がドラゴンフッシュの居場所を知ってて聞いたな。」


「うん。」


「任せてくれ。日時は連絡する。」


「了解。じゃあ、たっちゃんまたね。」


事務所を太郎と春男は出て行った。


「大丈夫すか?社長。」


喜一郎がたっちゃんに聞いた。


「大丈夫だよ。」


健太郎が答えた。


「健ちゃんのお墨付きだ。まぁ楽しみだな。」


タバコに火をつけてたっちゃんは笑った。


「おい!太郎、マジで大丈夫かよ?」


帰り道で春男は太郎に聞いた。


「大丈夫だよ。あれでもたっちゃんは仕事はきっちりやるよ。」


「どこに、そんな保証があるんだよ?」


「まぁさ、これは所長からもらった話だからね。」


「所長って警察所長かよ?」


「うん。東大の先輩と後輩の仲だそうだよ。」


「東大?」


「たっちゃんは、東大の法学部卒だよ。」


春男は、黙ってしまった。

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