第106話絶夜


サトミが乱暴されて気を失った。


まさる、ルミ、レイ、太郎は病院へ駆けつけた。



小さな個室でサトミは寝かされていた。



「太郎ちゃん、わたし悔しい!」



まさるがハンカチを出して泣いている。



太郎の怒りで感情的になりそうなのを必死で押さえた。



感情に流されてはいけない。冷静に自分と向き合え分析しろ。



「このまま植物状態になるかもしれません。」



医師からはそう伝えられてまさる、ルミ、レイはしゃがみこんで泣いた。



犯人を捕まえる。



分析しろ、自分をいや他人から神様扱いされてる人間。



頭の中で犯人像がテストのように書かれる。



四卓問題…。



これは違う。これは引っ掛け問題。あと2つだ、冷静になれ!






あいつだ。


太郎は、春男に連絡した。



「まるで名探偵だな?」



飛松誠治は、悪びれもせずに仮眠室で太郎と春男の前にいた。



「あんたの顔の怪我で気づいたよ。」



「その傷、息子から殴られた…。いや殴るように指示したんだろう?」



「…。」



「あんたの息子はモンスターだな。」


「わたしがした事だ。」


「いや、違う飛松育夫がした連続殺人事件だ。」



「飛松さん、本当の事を教えて下さい!」



春男は、思わず机を叩いていた。






「今日、任意で息子さんに写真を撮らせてもらいました。」



「何で!そんな事するんだ!」  



「あなたが認めたくないだけで息子さんは苦しんでいた。」



「あの子は、神の子だ。」



「イエスキリストですか…。」



「あの女さえいなければ息子は今頃、高級官僚だったんだ!息子をたぶらかして最後は残酷に切り捨てた。」


 

「それで一般女性を殺して良いわけじゃない!」



「良いんだよ。息子は選ばれた人間だ。息子から事情を聞くのは無理だ。今朝自殺した。」 



 







「いや、こちらが確保しましたよ。空港でね。あなた、息子さんの影武者に自殺を強要しましたね?」



「ふ…。」



それから飛松は黙秘を続けた。



息子も同様に黙秘を続けたが死刑が求刑された。



息子の顔は歪んでいた。



太郎に蹴られた時の傷が残っていたのだ。






「後味の悪い事件だったな。」



仮眠室で太郎は春男に言った。



「そうだな…。」



春男には今でも信じられない。

 


太郎は、そっと仮眠室を出た。



今日は、サトミの葬式だった。



あれからサトミは自殺したのだ…。





サトミごめんな…。



俺が早く気づいていれば。



連続殺人事件は終止符が打たれた。

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