第101話ルナとレナ


「え?」



「だから、ホームレスが連続死してるんだよ。」



「はぁ…。」



「木村!しっかりしろ!」



「してますよ。」



木村太郎―22歳。



「お前、いくら検挙率がトップとはいえ上司にその態度はなんだ!」



「普通ですよ。」



先月、飼ったばかりの犬の事を太郎は考えていた。





「課長って昔、職質かけた時に殴られて気絶したって本当ですか?」



「何?」



明らかに平沢課長は動揺してる。



「だから!職質かけて殴られて気絶したんですよね?」


太郎は、大声で言った。



もちろん周りに聞こえるように言った。



みんなクスクス笑っている。



「木村!貴様は!」



平沢課長は、太郎を捕まえて殴ろうとした。



「平沢課長!運動不足ですか?」


平沢は、太郎を真っ赤な顔をして


追いかけている。



全然、太郎を捕まえられない。



「お、春男!」


と太郎は通りすがりの喜多島春男に言った。



「よ!何してるんだ?」


「平沢課長と追いかけっこ。」



太郎はそのまま署内を出て行ってしまった。


平沢課長は、疲労困憊で倒れてしまった。




太郎は、寮に帰って来た。


「あれ?早くない?」と彼女が言った。



「うん、ルナとレナが気になった。」


ルナとレナはハムスターだった。



「また平沢課長を怒らせたの?」  


「良く分かんない課長なんだよな。」


「刑事課に配置してくれたのは平沢課長だよ。」


「苦手なんだよね。」






「相性最悪だよ。」


彼女は、微笑んだ。



「でも、太郎、あまり自信過剰になるのはダメだよ。」



「だってな、事件解決出来ちゃうんだもん。」



「能力は、上手く使ってね。」


「うん、分かった。」







「おーい!太郎!平沢課長が入院したぞ。」



春男の声がした。



「今、行くよ!」 



春男は、絶対、彼女に会おうとしない。



「胃潰瘍?」


「そうだよ。自覚無いのかよ?」


「昼間は、良く走ってたけどな。」


「お前の好き勝手の行動に翻弄されてるんだよ。上から圧力あるみたいだし、平沢課長だからお前は刑事やれてると思えよ。」



平沢課長は、ベッドの上で本を読んでいた。


「課長、お見舞いに来ました。」


「おお、喜多島君。」


「あの…。木村も来てますけど大丈夫ですか?」


「全然良いぞ。」



「チューす。ストレスですか?」


「だとしたら木村、お前のせいだ。」 


「だから嫌だって言ったんだ。」



太郎と平沢は睨み合った。



「ホームレスの変死、一応調べましたけど、特に事件性はないっす。」



「お前、嘘ついてるな。」


「良く分かりましたね。」


「お前は嘘をつくときは俺にしか分からない部分が反応するんだよ。」



「平沢課長は凄い眼力の持ち主だ。」


春男が頭を抱えた。



「俺は、犯人を見たんです。偶然ですけどね。」



太郎は、偉そうに言った。



「お前はいつも自信満々だな。」



「それは平沢課長の下で働いてるからですよ。」


「嫌味か!」



「そうとって貰って良いですよ。」



太郎も平沢も顔を見ないで意地を張っている。



「まーまー、二人とも警察官ですから。」



「俺は、体力的に頭脳的に警察官に向いてるかもしれないからなっただけっす。」



太郎が腕組みをして言った。



「お前は警察官には向いてない。」



「そうですか?」



「検挙率は良いかもしれないが人間性に問題がある。」



「何すか?それは俺をバカにしてるんですか?検挙率も体力も頭脳も無いあなたに言われたくないですね。」



「何だと!」



平沢は、腹を押さえて立ち上がった。

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