第91話隠し事


「咲ちゃんさ、何かから逃げてるの?」


「ストーカーに狙われています。何て…。」


「別れた彼氏から逃げてるとか?」


咲はため息をついた。


「そうなんです…。」


「仕方ないよね、咲ちゃん可愛いし。」


「本当ですか?」


「うん、でもストーカーには気を付けないとね…。」


咲は、唸っている。


「彼氏どういう人間?」


「ナルシストです。自分と歩く女は美しくないと気がすまない男です。」


「そっかあ、それは面白いね。」


太郎は無精髭を触りながら言った。


「だから、咲ちゃんに執着するのか。」


「そうみたいです。」



「美しいのも罪だね。」


「あの…。木村さんの奥様はどんな人なんですか?」


「あずあずは、美人だぜ。」


いきなり春男が仮眠室の中に入って来て言った。


「やっぱり…。」


和製ジャンヌダルクは深いため息を吐いた。


「緑ちゃんも可愛いよ。」


「春男さんの奥さんですか?」


「そう、産休中のべっぴんさん。」


春男は照れている。



その時、咲のスマホが鳴った。


「ストーカー男?」


「はい…。」


太郎は、スマホを取って話し始めた。


「刑事の木村太郎です。咲さんに何か御用ですか?」


「誰だよ!俺は咲の彼氏なんだよ。」


「そっかあ、困ったな、もう彼女は君と別れて俺と付き合ってるんだよね。」


「ふざけるなよ!」


「ふざけてるのはお前だろ!警察舐めてるのか?」


太郎の、声色が変わった。

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