第84話武装集団


新年早々に出勤して太郎は仮眠室のコタツの中で野球ゲームをしていた。


いつも弱小チームを選んでペナントレースを戦う。


ホームランを打った時の感触はたまらない。


そこに春男と慶一郎が入って来た。


「新年明けましておめでとうございます。」


ゲームに夢中な太郎に賢二郎は言った。


「挨拶ぐらいしろよ。」


と春男が太郎に言った。


「メリクリ!違うか、あけおめ。」


太郎は、早口で言った。



「新年早々、ここにいるなんてな。」


「新年会に行きたくないだけでしょう?」


「太郎、俺の家庭事情を何で知ってるんだよ?」


春男は太郎に聞いた。


「あずあずから聞いた。」


「そっかあ、最近、優しいんだよね緑がさ。」


「良かったね。」


「でも、心配ですね美人と結婚するのも。」


「トゲがあるからな…。」


春男の顔が青ざめている。



次の瞬間、警察署が大きな轟音とともに揺れた。


「地震?」


「地震すかね?」


春男は、いち早く机の下に隠れていた。


「春男ちゃんの結婚生活が上手くいかない訳が分かった気がする。」


白い目で太郎と慶一郎が春男を見てる。




「バカ野郎!小学生で習うだろ!地震来たら机の下に隠れてって…。」


「でも、何か聞こえません?」


慶一郎が二人に聞いた。


「足音かな…。」


太郎は、首を傾げている。



完全防備を固めた輩が仮眠室に入って来た。


春男は、慶一郎の後ろに隠れた。


太郎は、立て掛けてあった木刀を取り出して構えた。


武装集団の中から一人般若の仮面を装着した男が真剣を構えて太郎と対峙した。


「何これ?」


と春男は賢二郎の背中で固まっていた。


勝負は、一瞬だった。


太郎は駆けて木刀の上に立ち勢いをつけて般若の男の真剣も仮面も砕いた。


「どんな身体能力してんだよ、あいつ。」


春男は、震えながら言った。


あとは、乱闘である。



太郎は、的確に相手の急所を突いたが春男と慶一郎は、乱闘の渦に巻き込まれるままだった。


また、大きな揺れを感じていると武装集団は仮眠室から出て行った。


「これって初夢?」


春男は、倒れながら太郎と慶一郎に聞いた。



「一種のテロブームだよね。


最近、こういうテロ行為自体が増えてるみたいだよ。」


「テロですか…。」


慶一郎は倒れている春男を見ながら呟いた。


「テロか何だか知らねーけど警察まで狙うなんて強気な奴等だな。」

春男は立ち上がって言った。


「ほら、もうネットにさっきの乱闘がアップされてる。」


「あ、本当だ。」


「ゲーム感覚でしてるみたいですね。」


「ゲームじゃあ飽きたらずにリアルを求めた究極だね。」


春男は、くだらねぇと言ってコタツに入ってしまった。


「民間人、警察、と来たら次は総理大臣かな?」


太郎は賢二郎に聞いた。

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