第82話自殺症候群


「また、ODしちゃいました。」


「そっかオーバードラッグね。」


「どうしたらいいんですかね?」


「君は命に価値をぶら下げてるんじゃないかな?」


「価値?」


「うん、自然にね。それをやめてマイペースになる事かな。」


「マイペースですか…。」



太郎は、相談窓口なるものをまた再開した。


警察官は、過剰なストレスを受ける。


それを緩和するのが太郎と上層部のねらいである。


本当に危ない時は入院させる。


野部と春男は、たまに来る。


太郎が相談窓口をしている事は知らない。


教会の懺悔室のようなものだ。


春男は、もっぱら家庭の話だ。嫁さんが相手をしてくれなくなってという愚痴ばかりだ。


野部は、女性との付き合い方から始まって最後には太郎の愚痴になる。




「あの…。飛び降り自殺したいんですけど。」


切羽詰まってる様子だ。


「まぁまぁ、落ち着いて下さい。何で死にたいんですか?」


「上司によるパワハラです。」


「あ、そうですか。深刻ですね…。」






「こちらで確認しますので上司の方の名前を書いてもらえますか?」


「でも…。」


「大丈夫です。こちらで確認しますので。」


心配そうな手が震えている。


「ありがとうございます。じゃあ、こちらでお任せ下さい。」


「本当に大丈夫ですか?」


「はい。大丈夫です。」








まずは、家を差し押さえて次にカードを使えないようにしてあとは上層部に伝達すれば完了である。


次の日、一人の中年の警察官が相談窓口に来た。


「いきなり家を失って階級も落とされてどういう事なのか自分でもわからなくて…。」


「簡単です。あなたのパワハラ行為をやめるか警察官を辞職するかです。」


「わたしは、パワハラなんてしていない!」


「それにしては、あなたにパワハラされた人の人数が多いんですよね。」


「わたしは、認めない。」


「分かりました。辞職ですね。」


「待ってくれ!少し考えたい…。」



「わかりました…。わたしが不快感を与えてる人達に謝りたい。」


「それは個人情報なので教えられません。自分で考えて悩んで苦しんで答えを出して下さい。」


太郎は、小さなため息をついた。


警察官一人に悩まされているなんて組織的に警察が機能しなくなる。


それを防ぐのが相談窓口である。

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