第40話惨劇


愛し子


ここに生まれ変わる


もう大丈夫


立て続けに、子供が消えた。


誘拐?


連日報道は加熱した。


平成の神隠し。


「困ったね。いくら今の子供に危ないと大人が言っても子供は、好奇心の塊だからね。規制も難しいよね。」


太郎は、仮眠室の畳の上に新聞を広げて唸っていた。


「子供は、どこに消えたんですかね?」


梓が、太郎に聞いた。


「さあ?でも、犯人が何を目的としているかが問題だよね。遺体は、見つかってない。目撃者は無し…。」


「という事は、犯人は子供自体を欲しがっている?」


「うん、何か靄にかかっていて犯人像が見えてこない。」


太郎は、顎を触りながらイライラしたように言葉を吐いた。


太郎は、連日の捜査で疲弊していた。


自宅に帰ると田島が待っていた。


「団地内は、喫煙禁止ですよ。」


「木村さん、生きてたんですね。」


「何とかね。」


「まだ、死んでもらっては困るな。困ると言ったら神隠し。うちの組が子供誘拐して臓器売ってるんじゃねーかなんて噂流れて仕事がしにくいんですよ。」


「それはそれは、火の粉は飛ぶね。」


田島は、煙草を捨てて太郎の首筋を掴もうとした。


太郎は、首をひょいっと後ろに反らして反動でそのまま勢いで自分の額を田島の額にぶつけた。


「いっつ…。くらくらしやがる。」


「おっと…。すまないね。」


思わね激痛に田島は自分の額を手で押さえた。太郎の冷たい視線が、田島を氷づけにした。


何だ?…。あのまがまがしい殺人鬼のような瞳は、今までたくさんの修羅場をくぐり抜けて来た田島が、見た事無い眼力だった。


血だ。こいつからは、血の臭いがする。


太郎は、田島の震えた瞳から視線を外して扉の中に消えた。


田島の額からは、血と冷や汗が混じりあって流れていた。



「よう、田島、木村太郎はその様子だと元気みたいだな…。」


「頭、何なんですか?あいつは、化け物ですよ。」


田島は、鼻血を出していた。


「あいつは、化け物だな。確かに。」


「さすが…頭の兄貴と言ったところですか。」


「正しくは、同じ遺伝子を受け継いだだけだ。」

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