第3話取調室


「良いんですか?現場行かなくて。」


「良いの良いの、それより、あずあずさ、取り調べしたい?」


え?したい!でも、恐い!


「大丈夫、被害者女性の聞き取りみたいなもんだから。」


仮眠室であぐらをかきながら電子タバコを吸っている木村は言った。


「被害者女性?今回の事件と何か関連性があるんですか?」


「大有りだよ。命からがら逃げた被害者だからね。でも、強姦はされてしまって首も絞められている。だからセカンドレイプになるような取り調べは避けたいんだ。今日、畑の中で発見された絞殺死体もたぶん、同一犯の可能性が高い。そこであずあずに取り調べをお願いしたい。」


「分かりました。」


重い役割だな、素人同然のわたしで大丈夫かな?


「大丈夫だよ。あずあず、交通課で検挙率No.1だったんでしょう?たぶん、取り調べに活かされるよ。」


「はぁ。そうですかね?」


「うん、たぶん。」



たぶんか、昨晩の勉に聞いた太郎の話しが消えてしまうくらい太郎は気の抜けた男だ。


「じゃあ、俺は寝てるから取り調べ終わったら起こして、昨日、野球ゲームやってて寝不足なんだ。」


とイビキをかいて太郎は寝てしまった。


やっぱり腑抜けになっちゃったか。


「わたし..犯人が憎いです。」


「そうですね。」


神山光 26歳 看護師


彼女は、仕事終わり、自分の車の中で被害に遭った。


犯人は、あらかじめ彼女の車に乗り込んでいて犯行に及んだ。


彼女は、強姦された後に首を絞められたが彼女のアクセサリーに犯人は手を突き刺されて逃亡した。


「十字架のアクセサリーですか?」


「彼がお守りがわりにプレゼントしてくれた物です。」


「....でも、もう彼には会えない。汚れた自分をわたしは許せない。」


光は、目の下のくまを指で触って涙を流した。


綺麗な人、でも、ショックで痩せてしまい顔色は青白く唇に潤いが消えてカサカサになっていた。


「すみません、辛い事をお聞きしますが犯人の服装や特徴などを」


「悪魔でした。人間であって人間ではない悪魔でした。」


取り調べが終わり梓は、自分が警察官である事を重荷に初めて感じていた。


「悪かったね、あずあずに辛い仕事をさせてしまって。」


スーツ姿の太郎が廊下で待っていた。


何故か分からないが太郎の体に項垂れるようにして梓は、叫びに似た声を上げて泣いた。


痛い痛い痛い。


「痛みを受け止めて微かな光に手を伸ばして歩いて行かないといけない。」


太郎は、囁くように梓に言った。

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