御臨終から始まる新世界
それは、突然であった。
まるで全身麻酔をしたかのように龍之介は深い眠りに陥ったのである。
しかし耳から聞こえる音、不思議と情報は入ってきた。
声には出せないがその情報により自分がどんな状況なのかを判断するには
時間を必要とはしなかった。
「ピッピッピッピーーーーーーーー」
龍之介に取り付けられた心電図が、心臓を止まるのを静まる病室で知らせていた。
龍之介の脈と瞳孔反応を確認する医師
「御臨終です」
「おじいちゃん~(泣)」
「じいじい~起きてよ~」
孫・玄孫たちがすり寄って、泣きじゃくる。
「あなた、御苦労さまでした。」
妻も涙を流し龍之介の死を悲しんだ。
龍之介の死因は老衰、細胞分裂の回数が限界を来たのだ。
龍之介の最後の言葉は、
「今期のアニメの最終回を見たかった…」である。
龍之介は孫たちの影響でオタク・・・・・・理解のあるお祖父ちゃんとして、
孫たちに愛されていた。
龍之介は、孫たちにお小遣いをいっぱい渡すような祖父では無かったが、
孫達が希望する本を買うのはどんな本にも差別なく、買い与えたのであった。
その多くは、ライトノベルであった。
家族に見守られながら臨終を迎えた三上龍之介、享年100歳
平成の剣豪・剣聖・武士・塚原卜伝の生まれ変りと言われた男、
三上龍之介の人生終焉を迎えた。
死の前日まで元気だったのだが、朝、昏睡状態になっていた龍之介
10歳年下の妻に発見され、119番に連絡され救急車で運ばれ病院のベッドの上で
息を引き取った。潮が引くかのように息を引き取った静かな最後であった。
三上龍之介は、確かに死んだ。
一瞬暗い闇を通り抜けたと思うと明るい光によって目が覚めたのである。
今、現世とはまったく別の世界の建物の中にいる、
気が付き正気を取り戻した龍之介は、自然と死んだ事を受け入れていた。
無駄に広い部屋にポツンと立っている状態で気が付いたのだ。
それまでの記憶があやふやであった。
この部屋にどのようにしてきたのかが。
気が付いた部屋は、まるで二条城の大政奉還が発表されたような部屋・・・・・・日本式である。上段の間がある畳みが敷かれた部屋
「あ~ここがあの世か!しかし、三途の川もお花畑も見ていないけど…
もうすぐ閻魔様に会えるのだな世界大戦に出兵し、無事帰国、
それからは家族とごくごく普通に生きてきた。
定年退職したあとは趣味の武道に熱中、平成の剣豪と呼ばれる迄に習得
全国、津々浦々の温泉・寺社仏閣巡りに合わせて全国の道場で鍛練も
出来たし思うことはもうない。泣くな孫達よこれも運命、しかし、
今季のアニメの最終回は見たかったな。これも運命仕方ないか。
さてさて地獄に落ちるか、天国に行けるかの~…閻魔大王様に会いに行くか、
閻魔大王様ではなく阿弥陀如来様かの~」
死を受け入れていた龍之介はいろいろ考えていた。
不思議と現状に違和感を覚えず極々自然に受け入れる、死後と言う世界はそう言う物なのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます