冬麗なる陽気が指す箱庭

空が晴れて明るい日は好きだ。




気分が晴れ晴れとして、


心わだかまりが自然と消え、


明るい声を出して過ごせる。




そんな日は楽しいに決まってる。




冬の寒さが姿を隠せば、


かすかに温かい陽射しが、


わずかに春の顔を覗かせる。




冬の日光に照らされる二人が、


日常の一瞬に麗らかな日を過ごす。




凍えるような冬を思い出し、


春の心がふわりと触れる。




キラリと浮かんで、


そして消えていくような、


この時にしかない今を見下ろす。




冬の日光が照らす校庭が、


いつもより少し綺麗に思えて、


言葉を忘れたように時が流れる。




彼らの時は緩やかに過ぎ、


春が見せる温和な雰囲気を、


いつまでも待ち続けるようだ。




その彼らを冬に残し、


太陽は空を早く移動し、


昼がだんだんと長くなり、


冬は影を無くしていく。




日脚が伸びて、春の足音が響く。




深く深く終わらない。


そんな寒さの冬だったのに。




春の陽気は確実にその姿を見せていく。




校舎の屋上から、


冬過ぎの風に二人は、


ふっと攫われそうになる。




彼女の横顔を少し見て、


それだけのことだけで、


春が少し近づいたような、


そんな幻を感じた気がした。




「綺麗だね」




幻のような彼女が、


ふと垣間見せた顔色に、


春色をしていたような気がして。




「そうなのかもな」




口をついて出た一言は、


少し表情を隠したようで、


そして、彼には精一杯だった。








春の姿をそこに見ながら、


冬の終わり際に立つ彼ら。




冬の麗らかな日光に、


照らされた彼らの心は、


いっぱいの光に満ちている。




彼らは見下ろすだろうか。


彼らは見上げるだろうか。


彼らは何を見るだろうか。






彼らは何を知るだろうか?




春を迎える二人だけが、


きっとそれを知るのだろう。

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