本屋とコーヒーショップを隣接させるのは罠である。
休日。欲しい本があるわけでもないのに通りがかった本屋に吸い込まれてしまう。あてもなく店内をうろつき、小説、漫画、写真集、雑誌とおおまかにすべての棚を見る。時折足を止め、本を手に取り、いかにも興味がありますよという雰囲気を出しながらも、これは私の好みではなかったようだ、あるいは買うほどの興味をそそられなかったという体で本を戻す。そんなことを繰り返し、30分から40分を費やした。さすがに時間を使いすぎただろうか。ここまで長居したのに何も買わずに出るのも申し訳ない気分になる。
「(やっぱりあの本は買おう)」
と、決心をつけて2冊の本を抱えてレジに向かう。思いの外値の張る買い物にほんの少し後悔しながらも満たされた気持ちで本屋を出た。
と、すぐ隣にコーヒーショップがあることに気付く。いや、正確には本屋に足を向けた時点で視界には入っていたのだけれど忘れていた。目についてしまっては誘惑に抗えない。更なる出費を財布と相談し足取りを進める。
「いらっしゃいませ!ご一緒にケーキやスコーンはいかがですか?新商品のプリンもオススメですよ!」
店員の明るい笑顔に気圧されながらも曖昧な笑みで首を横に振る。
「チャイティーラテのホットを」
コーヒーショップに来ておきながらコーヒーではないのかと思う人もいるだろうが、まぁ、なんというか、チャイが好きなのだけれど日常では中々飲む機会がないから、こういう場でメニューの中に見つけるとついそれを頼んでしまう、という一種の習性である。
支払いを済ませ、チャイラテを受け取り、店内奥の一人用テーブルにつく。冷えた店内ではホットの飲み物がちょうどいい。
「(なんだかやけに贅沢な時間の使い方をしているな)」
休日なのだから構わないのだけれど、普段よりも出費がかさんでしまったのは否めない。テーブルの隅に先人が残していったのであろう結露の跡を眺めながら、明日の昼食は安いものにしようと心に決めた。
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