Scene.25 盟友
刈リ取ル者へ。
お話がしたいので連絡お願いします。
070-XXXX-XXXX
検索をかけていたところヒットしたメッセージだ。
「雅原 真理……あの真理お姉様か?」
心当たりは大いにあった。雅原 恵理の姉であり、みんなの真理お姉様でもある少女。
何故連絡しようと思ったかは分からない。だが話くらいは聞いてもいいだろう。そう思って乃亜はスマホから電話を掛けた。
数日後
夜の公園に私服の少女が待っていた。一見優等生に見える彼女にしてはかなり不釣り合いな待ち合わせ場所だった。
実際ガラの悪い兄ちゃんに声をかけられたこともあったが天使の加護を受けていた時代に培った護身術で難なく撃退した。
その様子を見て声をかけて来た側の人間に同情しつつも刈リ取ル者は彼女と自分を隠匿用結界で覆うと、≪
「こういう形で会うのは初めてだな。あれからどうなった?」
「天使の力は奪われた。学校も退学になって、親とももめにもめてて居場所がない」
「そうか。で、何の用だ? まさか世間話するためじゃあないだろ?」
刈リ取ル者が真理に尋ねる。何のためにわざわざ呼び出したのかを。
話だけで済むなら電話ですれば良かった。しかし彼女は電話では詳しい話はせずに直接会う事にこだわった。そこが引っかかる。
「うん。まず聞きたいことがあるの。アンタはこれからも人を殺すの?」
「ああ。君の妹さんのような虐げられている人がいる限りな」
「そう」
しばらく黙りこんだ後、彼女は胸の内を明かす。
「私、アンタと一緒に戦ってもいい?」
「何……?」
「今回の事でアンタの気持ちが少しわかった気がする。恵理を救う事は出来なかったけど、恵理のように苦しんでいる人を救いたい。……例えそれが法律や人の道に反する事だったとしても!」
「そうか」
刈リ取ル者は真理の額に指を当て、≪
「……どうやら本心みたいだな」
「私はいつだって本気よ」
「いいだろう。ミスト、力を授けてくれ」
「えー? 良いのかよ乃亜。コイツ今まで天使共のリーダーやってたやつだぜ?」
「『昨日の敵は今日の友』って言うだろ? 安心しろ。さっき記憶を読んだんだ。そう簡単に裏切るような奴じゃない。大丈夫。俺が保証するよ」
「分かったよ。お前がそこまで言うんなら……おい真理、頭がキッツイ事になるけど我慢しろよ!」
渋々引き受けたミストが真理の体の中に入る。と同時に彼女の身体、特に頭の中が強烈に熱くなる!
「うああああああああ!!」
身体が引き裂かれてしまうのではという程身を突っぱねて背中も弓なりにしなる。
「大丈夫。大丈夫だ。しばらくたてば収まるから安心しろ」
刈リ取ル者は熱にうなされる真理の手を握り、大丈夫だと優しく諭す。やがて熱が引き、真理も刈リ取ル者と同じ能力が使えるようになった。
「試さなくていいのか?」
「大丈夫。天使の時と大して変わらないから」
そう言って刈リ取ル者と一緒に歩き出す。
「どこへ行くつもりだ?」
「アンタの家。これからはアンタの家に泊まるわ」
「いいのか? 俺だって男だぞ?」
「変な真似したらボコボコにするわよ」
「うっ……」
若い男と女が一つ屋根の下……というシチュエーションに彼女の事を思って警告したが、実際本当に再起不能になるまでボコボコにされそうなので自分が手出しをしなければ多分大丈夫だろう。そう思って乃亜は真理を連れて自分のアパートへと向かっていった。
翌日の早朝、会わせたい人たちがいる。との事で乃亜は真理を連れてファミレスへとやって来た。
「会わせたい人たちって……コイツら?」
「ああ。サバトの幹部だ。知り合いだろ?」
「悪い意味でね」
嫌悪感を表すサバト幹部連中に乃亜はまず冷静になってと説得し、そして昨日起こった事を出来るだけ正確に伝える。
「ふーん。要するにあんた直属の部下になるってわけ?」
「形式的にはそんな感じです。どっちかって言うとパートナーな感じでしょうね。上下関係は確かにあるといえばあるけどそこまで明確じゃあありません。で、どうします?」
「俺は別に構わないなー。俺の給料減らされるわけじゃないし」
「ボクも別にかまいませんよ。敵が減って味方が増えるって事ですしね」
「私もマスターの意見に従います」
「じゃあ彼女を受け入れるって方針で良いわね。後で正式な契約書もってくるから面倒だけどその時もう一回来てくれる? 悪いね」
そんな感じで何とか説得させることが出来た。
「……やっぱり天使ってサバトと対立してたんだな」
「まぁね。相手の方が勢力強かったから私たちが劣勢だったけど」
「これからは天使と戦うことになるんだぜ。かつての仲間と戦うことになる。もう一度聞くけど覚悟は出来てるか?」
「覚悟なんてとっくにできてるわよ。何度も言わせないで」
「ならいい」
この日、新たな盟友が誕生した。
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