Scene.22 いじめられた過去と正義の味方である今
あの屑ども……俺の両親が言うには女の子が欲しかったらしい。
だから俺は男という時点で親の期待を裏切ったクソ野郎らしい。
超音波エコーで性別が分かった瞬間、堕ろしたいと本気で医者に頼み込んだらしい。当然医者は却下した。まぁあのクソ共ならやりかねん。
産まれてからも世間体を気にして仕方なく育てていたという。「お前なんて産むんじゃなかった」「お前を産んだことがそもそもの大間違いだった」「お前が自殺すれば全て丸く収まるんだ」事あるごとにそんな言葉を浴びせられた。
そして俺が産まれて2年後に待望の女の子、美歌を身ごもった事が分かった瞬間、育児放棄が本格的に始まった。
メシ抜きなんてしょっちゅうだし、あったとしても
それは小学校に入学するまでには顔中に広がり、顔の醜さからいじめが始まった。
小1の頃の担任で恩師の
いじめに関しては見て見ぬふりを決め込むだけならまだマシな方。いじめをする奴の味方をして俺に対して仲良くしろだのお前が我慢すれば全て丸く収まるんだみたいなことをほざく奴もしょっちゅういた。
誰も助けてくれない。親、教師、学校、教育委員会、警察。どいつもこいつも俺を救ってくれなかった。それどころか救いを求めて差し伸べた手を叩いた。
俺が抵抗しようものなら「何でお前はそんなことするんだ!?」といじめをする奴ではなく、俺を叩いた。俺は今でもアイツラの事は絶対に許せない。
「復讐したって何になる? 虚しいだけだろ?」「憎しみが産むのは新たな憎しみだけだ。それよりも愛で赦す方が大切だ」
親から育児放棄され、お前が死ねば全て丸く収まるんだと言われ、何も悪い事をしていないのに無視され暴行された人間はそんなことは思わない。
絶対に赦すな。
徹底的に憎め。
そして殺せ、破壊しろ。
内に秘めた憎悪を、湧きあがる怒りを、相手にぶちまけろ。
救いを求めて差し伸べた手を握ろうとせず、それどころかその手を叩いた最低の屑以下の連中が犯した大罪を、そいつの死をもって償わせろ。
いじめられた側の本当の心理はこうだ。
実際俺はそうした。
本能と破壊衝動に突き動かされるまま、一切のためらいも迷いも無くクラスメート全員と担任、そして親と妹を殺した。復讐を遂げた後の虚しさとか、そんな下らないものは無かった。
あったのはもう2度と暴行を振るわれることが無くなったことへの安堵と、復讐を成し遂げた後の達成感、満足感だ。あいつらを殺したことでようやく俺は人間としてまともな人生を歩めるようになったと思うと心の底からスッキリした。ネガティブな感情なんて一切なかった。
あいつらを赦したことなんて今までただの一度もないし、これからも赦すつもりは微塵もない。
通ってた高校で大事件が起こった時も(実際には「俺が」起こした事件だが)心配するそぶりすら見せずに「
日本だけでも1億人ほど人がいるそうだ。その中の1%しかいないクズでも100万人、0,1%しかいないゴミクズでも10万人はいる。こいつらはとある依頼人の言葉を借りれば「こんな奴らは遺伝子を絶やした方が世のため人のためになる。殺すことは清い心で社会に奉仕するボランティア活動だ」と言えるようなクズだ。いやクズよりも劣る何かだ。
世間というものはいじめを受けた側に対しては酷く冷淡だ。
いじめられたショックで不登校や引きこもりになったり、対人恐怖症やうつ病にかかったら「落第者」のレッテルをはりつけ社会のレールから外して最初から存在しなかったことにされる。
一方、人をいじめた奴は自分の犯した許されざる犯罪行為を「若気の至り」だの「ヤンチャしてた」だのというたった一言で片づける。昔の事なんてころりと忘れて人間的にすくすくと成長し優良企業に就職。結婚して子供にも恵まれる成功者となる。
ニュースではどこの学校もコピペしたかのように「いじめは確認できなかった」と言い、話題になった福島から越してきた子が150万円恐喝された事件でも教育委員会とか言うクズ共は「いじめを回避するために自主的に渡したからいじめじゃない」と寝言をほざく始末だ。
これ以上理不尽な事があるだろうか。こんなにも報われない話があるだろうか。自分には何も非が無いのにトラウマを作られただけでなく社会からつまはじきにされる。ここまで悲惨な事があっていいのだろうか? いや、あっていいわけがない。
だから俺は正義のヒーローになることを決めた。
人知を遥かに超える圧倒的な力で世の中の悪を粛清する、戦隊ヒーローや仮面ライダー、プリキュアのような正義の味方になることを選んだ。親、教師、学校、教育委員会、警察。そのすべてから見捨てられた人たちのたった一人の味方になりたい。それが刈リ取ル者を名乗った大きな理由だ。
こんなことを言うと世間は「お前は尊い人の命を何だと思ってるんだ!?」と言って俺を断罪する。だがそんな奴には「じゃあいじめを受けた者の命は尊くないのか?」と言い返す。こういう奴らはいじめを受けた人間の気持ちなんて理解できないんだ。
少なくても俺が生きている限り、俺の手が届く範囲ではいじめを受けている者を護りたい。法で守られた悪を刈る正義の味方としてここだけは譲れない。
1人でも多くの人間に救いの手を差し伸べ、救済したい。それが俺がこの世に産まれてきた存在理由そのものであり、俺の果たす使命だと思っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます