天使の少女とサバト
Scene.15 敵討ち
ファミレスにいつもの4人と共に乃亜とミストがいた。
「全員集まったようね。みんな、例の件の人、うちに入って来たから。さあ乃亜、自己紹介して」
「初めまして。
「俺の番か。俺はミスト。見りゃ分かると思うが、悪魔だ。乃亜と同じくらいの強さはあると思うよ。よろしくな」
乃亜とミストはそう、簡単に挨拶を済ませる。
「初めまして。ボクは
「リリムと言います。よろしく」
張り付いた笑顔の男は乃亜に丁寧な口調で、大柄のミストと同じような肌をした女は無愛想に答えた。
「で、あとは私と、塩田ね。ところで乃亜くん、スマホ持ってる? 持ってるなら連絡先を教え合いましょ」
手早くメールアドレスと電話番号を交換する。一通り終わったところで麗から送られた電話番号が書かれたメールに妙なアドレスがついていた事に気づく。
「これは何ですか?」
「それは私たち幹部が使ってるアプリよ。情報交換やデータのアップロードに使えるわ」
「悪魔の組織って割にはずいぶん文明の利器を利用してますね」
「ま、利用できるものは利用しましょって事よ。他の組織も似たようなもんじゃない? あるかどうかも知らないけど」
「ところで、この前依頼を受けて人をいじめて自殺に追い込んだ奴を殺すことにしたんですがどちらか手伝って欲しいんです。絶対天使の連中にマークされてると思いますので人手が必要なんです。多分俺一人じゃ手におえないと思いますので」
「依頼の報酬山分けしてくれるなら行くよー」
塩田が率先して手を上げた。
「うん。塩田とミストちゃんの3人なら真理相手でも何とかなりそうね」
「真理の事知ってるのか?」
「もちろん。事あるごとに邪魔しにくるガキでしょ。やたら強くて困ってるのよねぇ」
木林が心底ウザそうに言い出す。どうやらサバトとは長い間対立しているようだ。
「他に何かなければ解散ね」
それで今日の集まりはおしまいになった。
3日後
自殺した真奈美のスマホを解析……と言ってもアプリやメールのやり取りをさかのぼってみるだけだが、それでいじめの中心人物とそいつのグループがよく利用するカラオケ店を調べ上げた。
時刻は夜の8時、夕食を食べ終えて夜はこれから。という時間帯。塩田は結界の中に身をかくし、乃亜は≪
「!? だ、誰!?」
「刈リ取ル者だ。なぜ俺が来たのか分かるな?」
「い、いや、あたし何も悪いことしてないし!」
「真奈美を殺しといてよくもその口が言えるな」
「こ、殺した? バカ言わないで! あいつが勝手に死んだだけじゃない!」
以前聞いたことのあるようなセリフをぶちまける。罪悪感はかけらもない。自分は
「いじめは犯罪なんだよ。靴を隠せば窃盗罪だし傷つけたら器物損壊罪、暴言を吐いたら名誉棄損罪か侮辱罪、暴力を振るえば暴行罪あるいは傷害罪、金を脅し取れば恐喝罪、全部立派な犯罪行為だ。でもいじめなら何となく許される雰囲気がある。警察官も裁判官もその雰囲気にのまれてる。
だから国に代わって、天に代わって、俺が貴様らの罪を裁く。テメェも犯した罪を償ってもらおうか?」
刈リ取ル者は罪を犯したという自覚がかけらもない害虫の左腕を全壊させる。絶叫が部屋に響いた。
塩田は手早く少女たちの足をAK-47で狙って動けなくする。
「言っておくが、『お願いしますから殺してください』と泣きつこうが許さんぞ」
そう言って左腕を破壊した少女に天誅を下す。腕を砕き脚を破砕し血べトを吐くまで胴体を痛めつける。
塩田も別の少女を極力手足を狙って撃って致命傷を避ける様に撃ち抜く。全員の動きが鈍くなったところで刈リ取ル者は≪
「どうだ? 気分は?」
「な、何でわざわざ痛めつけたのに治すの?」
「だって普通に殺しちゃ復讐にならんだろ? 出来るだけ痛めつけてからでないと真奈美の苦しみを味わえないだろ?」
そう言って傷の癒えた少女に再び鉄槌を下した。傷つけては治し、また傷つけるを繰り返していた、その時だった。
部屋の壁や床に沿って張られた結界を何者かが穴を開けた。振り返ると真理ら4名の天使たちがいた。
「出番だな!!」
ミストが乃亜の身体から噴き出し、実体化する。
「来たか……真理!」
「刈リ取ル者……サバトと手を組んだのね」
「まとめて退治して差し上げますわ」
弓を構えた少女が得物を引き絞り、狙う。そこへ塩田がAK-47の射撃で邪魔をする。
「邪魔をしないで!」
「ミスト! お前は真理を!」
ミストは借りたAK-47をぶっ放しながら真理に肉薄していく。弓を構えた少女が塩田に気を取られている隙に刈リ取ル者は杖を持った少女に襲い掛かる。
「させない!」
刈リ取ル者の前にこの前と同じように舞と言われた少女が立ちはだかる。何度か殴ってみるがやはりあの時と同じようにガードは固く、崩すことは出来ない。
「塩田さん! 援護を!」
だが今日は援護してくれる仲間がいる。装填を終えた塩田が景気よく弾丸をぶっ放す。
「くっ!」
舞は横から飛んできた弾丸を防ぐため片方の腕で防ぐ。それは両手では防げた刈リ取ル者からの攻撃を片手で防がなくてはならないことを意味していた。直後、鋭い右の拳が舞を襲う。その一撃は防御用結界を破壊し、かまえた盾のガードを弾き飛ばした。
その大きな隙を刈リ取ル者は見逃すわけがなかった。左の拳の一撃をボディに叩き込み、さらに顔面に蹴りを食らわせた。彼女はひざからその場に崩れ落ちた。
「舞!」
真理が叫ぶ。出来るのなら今すぐ援護に行きたいがミストと戦っていてそれどころではない。
「刈リ取ル者! コイツをつかえ! 引き金を引けばすぐ弾が出る!」
塩田が彼に武器を渡す。それはRPG-7……世界で最も使われている対戦車兵器だ。自分の身長の優に倍以上ある怪物が得物を構える。その光景は7歳の少女であるアリアには凄まじい恐怖を与えた。
刈リ取ル者は何のためらいも無く引き金を引いた。直後弾頭が飛びアリアを直撃した。強烈な爆風とバックブラストがカラオケルーム内に吹き荒れる。
アリアの服は焼け焦げボロボロの状態になっていた。ぐったりとしている。
「アリア!」
「お姉様! いったん引きましょう! このままではわたくしたちが負けてしまいますわ!」
「仕方ないわね。引きましょう! 舞、逃げて!」
「は、はい。分かりました」
舞が若干ふらふらしながらも逃げ出す。それを見た弓を持った女も後に続く。最後に真理はアリアを抱えて仲間たちと共に逃げ去って行った。
その光景を手足を撃たれたり破砕されたりした激痛に耐えながら呆然と見ていた少女達に刈リ取ル者ら3名が声をかける。
「ちょっと邪魔が入ったが続きといこうか」
結界を張り直し、音等を外部から完全に遮断したうえでさっきまでやっていた事を再開させる。その日、フロントからの延長するかしないかの電話が鳴るまで正義の執行は続いた。
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