Scene.14 サバト
自宅を脱出した乃亜は謎の2人に連れられ家の前に止めてあった彼らの車に乗り込み荒っぽい運転に揺られながら猛スピードを出して逃げていた。
「ちょっと木林さん! 運転荒いッスよ! ケガ人が乗ってる事忘れないで下さいよ!」
「追いつかれたらどうすんのよ!?」
「ったく……ところでお前、大丈夫か?」
乃亜と共に後部座席に乗り込んだ青年が声をかける。
「大丈夫だ。怪我は自力で治せる」
乃亜は自分の身体に≪
「凄ぇな。それじゃあ医者は必要なさそうだな」
「ところでこれからどこへ行くつもりなんだ?」
「俺たちの隠れ家。
しばらく車に揺られていると、とあるアパートの一室に招かれた。部屋の床には何やら怪しい魔法陣が描かれていた。
「とりあえずこれで一安心だな」
「あの魔法陣のおかげか?」
「そう。あれで天使には私たちの存在に気づくことが出来ないようにしてるんだ」
「ふーん。ところで、あんたたちは何者なんだ?」
乃亜の質問に少女が答える。
「私達はサバトという組織のものよ。多分
あ、そうそう。自己紹介がまだだったわね。私はこういうものよ。ちなみにコイツは
そう言って、少女は運転免許証を見せた。どう考えても美歌と同じくらいの年の子にしか見えない少女だが……
「
「今年で28だから今は27よ。じゃあ自己紹介も終わったことだし、話を詰めようかしら。具体的にはコレね」
そう言って彼女は親指と人差し指で輪を作った。
「いくら欲しい?」
「……とりあえず100万」
特に根拠も無く適当に応えた。よくネットで月収100万も夢ではない! という怪しい文章が躍っているのでそれに合わせて特に意味も無く答えた。
「ふ~ん。ずいぶん謙虚な坊やじゃない。いいわ。それで話を進めるわ」
「!? ちょっと待て! いいのか!?」
「あなたは気づいてないようだけど悪魔の力を使えるってのはそれだけ貴重な人材なのよ。それだけの価値があるとは思っているわ。100万程度じゃかなり格安だと思うけど」
「そ、そうか」
ミストも悪魔の事が見える人は貴重だとは聞いてはいたがまさかここまでとは。俺って結構特別な人間なんだなと改めて思った。
「それと、正義のヒーローっていう「副業」をやりたんだけどそれだけは絶対に認めてくれねーか? そこだけはどうしても譲れない。その分給料は低くてもいい」
「分かったわ。認める方向で調整するね。今日は疲れたでしょ。押入れに布団があるからそれで寝なさい。
食料は切らしちゃってるから食事は近くのコンビニで済ませてちょうだい。じゃああたしたちは行くから何かあったらここに電話してね」
そういうと2人は電話番号の書かれたメモを残して去って行った。今日は疲れた。乃亜は布団を敷いて早めに寝ることにした。
翌朝
木林と塩田が雇用契約書なる契約書を持ってやって来た。
「サバトに入るってんなら一応会社に雇用されるって形で採用してるの。だから契約書にサインしてくれない?」
乃亜は一通り書類に目を通し自分の名前を書こうとする。が……
「ちょっと待った! この契約書、調べさせてもらうぜ。いいな?」
「どうぞ。お好きなように。言っとくけどこれ、悪魔の契約書じゃないからね。そんなセコい真似しないわよ」
2人の間に割って入ったミストは霧状になり自分の身体で契約書を包み込む。しばらくして……
「確かに悪魔の契約書じゃないね。ただの紙みたいだ」
少し安堵したミストの声が聞こえてきた。
「なぁミスト。悪魔の契約書って何だ?」
「悪魔が作った契約書さ。サインしたら最後、人間はもちろん悪魔達ですら逆らえない。どんな滅茶苦茶な内容だったとしても強制的に約束事を守らされることになるよ。悪魔でさえ約束事だけは守るっているのはそういうことさ」
「じゃあこの紙はただの契約書で良いって事なんだな?」
「ああ。俺のみた限りではね」
そう言えば地獄の悪魔でも約束は守る(悪知恵は使うが)と聞いたがそういう事だったとは。乃亜は妙に納得した。
彼はしばらく契約書を見た後、サインした。
「よし。じゃあこれであなたはあたしたちの仲間って事ね。よろしく」
この日、サバトに新たな幹部が誕生した。それは究極の天使にも届きうる力を持つことになるが、それはずっと後のお話。
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