第16話君の記憶
東四郎が、学校に来た。
咲が、愛の事を話すと東四郎は青白い顔になった。
お見舞いに、咲、東四郎、渚で行く事になった。
病院の病室前で東四郎は固まってしまった。
咲が扉を開けた。
愛は、眠ったままだった。
東四郎が、愛の手を握ると握り返してきた。
これには、医者も愛の両親もびっくりした。
東四郎は、両親に頼まれて病院に残った。
先に咲と渚は帰った。
「何か複雑な気持ち…。やっぱり東四郎には愛が良いのかな?」
咲は、渚に言った。
「分からないけどあの状態で手を握り返すって事は潜在意識の中で加藤君を覚えている証拠だよね。」
自宅に帰ると久しぶりに光は女の子とリビングでゲームをしていた。
久しぶりに、お湯に浸かった。
全身から生気が抜けていく感じだった。
今、愛は生死の境をさ迷ってい途中だ。
それが東四郎の手によって左右されている。
愛から東四郎を奪ったわたしは悪女なのかもしれない。
それでも咲は、東四郎を諦められないでいる。
風呂から出て咲はスマホを握りしめたままベッドで横になった。
「諦める必要は無くない?」
光が扉越しに言ってきた。
「でも、実際、愛を見ると残酷な事をしてるみたいな気持ちになる。」
「それはそれで、別問題だと考えなよ。同情で人を好きになれたらみんなカップルだよ。」
「そうだね。」
いつ、光に愛の事を話したのか忘れたけれど咲は、眠ってしまった
夜中に東四郎から電話がかかってきた。
【もしもし、夜中にごめんね。】
【大丈夫だよ。】
【愛が、意識を取り戻したよ。でも…。】
【でも?】
【僕以外の記憶がないらしい。】
【そうなんだ…。】
やっぱりと咲は、思った。
【側にいてあげて。】
それしか咲には言えなかった。
東四郎は、何も言わなかった。
次の日、下駄箱にまた手紙が入っていた。
《天罰》
と書かれていた。
昼休みに東四郎と渚に手紙を見せた。
「意味不明だね。」
と渚は言った。
東四郎は、何故か怯えていた。
「愛ちゃん、意識取り戻したんだ。良かったね。」
と渚は言った。
東四郎は、手のひらをずっと見つめていた。
「今日も病院行くんでしょう?」
咲は、東四郎に聞いた。
「うん…愛の両親に頼まれたしね。気は進まないけど。」
「行ってあげてよ。東四郎の事しか思い出せないんだから。」
東四郎は、何も答えなかった。
部活中、咲は、ずっとため息をついていた。
行かないで。
この一言が言えなくて咲は、辛かった。
「ねぇ、悩み事でもあんの?」
未夢に聞かれた。
「うん…。」
咲は、未夢に全部話した。
「マジ?加藤って優柔不断でバカだなとは思ってたけどそこまでとはね。生死に関わる事でもわたしだったら行かせない。」
咲は、やっぱりと思ってため息をまたついた。
大輝に告白されたなんて未夢に言ったら
大変だろうな…。
あぁ、わたし思考回路が壊れてきたかも。
いっそ悪魔に心を奪われたい。
悪魔に心を売り渡して
東四郎の心を買う。
そんな悪女になれたなら楽かもしれない。
妄想ばかりが浮かんでは消えて目の前が見えない。
家に帰っても誰もいない。
当たり前である。
一年前に両親と光は交通事故で死んだのだから。
でも、光だけは成仏出来ずにこの家に幽霊として住み着いている。
遺産で何とか一人で咲は、生きている。
親戚の家に世話になるのだけは嫌だった。
渚には話してない。
愛は、知っているけど…。
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