ゲームマスターだけどお前らに言いたいことがある!

ちびまるフォイ

ゲームバランスを壊すんじゃねぇぇぇ!!

どうも、『ダークソウルファンタジア』のゲームマスターです。

最近ゲームに知らないキャラが登場してくるんですよ。


モデルデザイン班に聞いてもそんなデータ作ってないっていうし……。

で、調べたら最近やたらゲーム転生してくる人がいるんです。

どうやらその人達みたいなんです。


「マスター、またゲーム転生がやってきましたよ」


「ぐぅ……またか」


「メインヒロインの製造が追いつきません。

 今ですら、ゲーム転生者が増えすぎたおかげでメインヒロインあてがえないのに」


「こう……ちゃちゃっとできないものなの?」


「ムリです。メインヒロインを作る苦労を知らないんですか?

 胸は大きくして、ちょっとエッチで、髪が長くて、ツンデレで、主人公が大好き。

 この要素を盛り込んだヒロインを作るのがどれだけ大変か」


「うーーん。まずいなぁ」


転生ゲーマーがさっさとクリアして進めるもんだから、

こちらの用意していたヒロインもイベントもストーリーも一気に消化される。

まるでわんこそば状態。


「よし、まかせろ。難易度をバカ高くして、ゲームの進行を食い止める!

 その間にメインヒロインの増産をいそぐんだ!」


「まるで死亡フラグ……」


ようは転生ゲーマーがサクサククリアするのが問題なのだ。

序盤の敵のステータスを釣り上げ、武器を弱くし、エンカウント率アップ。


これでクリアするまでに時間がかかるだろう。


「うん、これでOKだ。これでしばらくは……」


「大変です! もうクリアされました!!」


「はいぃぃ!? なんで!? むしろ早くなってる!?」


「やつら、チートや主人公補正を使い始めました!」


「この……卑怯者めぇぇぇぇ!!」


ザコ敵をめっちゃ強くしたことで展開が遅くなったのを嫌ったのか、

ゲーム転生ユーザーたちはチート系を使い始めた。

彼らの辞書にレベル上げというものはない。


「どうするんですか! ますます攻略されてますよ!

 このままじゃメインヒロインが間に合いません!」


「ええい! こうなったらやぶれかぶれだ! ボスを強化するぞ!」


「マスター、ボスの強化は禁じ手です!

 ともすれば挫折者を大量に出してクソゲー呼ばわりされたあげく

 最終的にはAmazonレビューで低評価つけられますよ!?」


「しかしもう手はないんだ!!」


ゲーム転生どもが到着する前にボスの強化を終えた。

一撃で即死するほどステータスを釣り上げ、隙をつぶしにつぶした。


もうラスボスよりも強くなってしまっているがかまってられない。


「よし、これでしばらくは持つはずだ……」


「あの……」


「え、まさか」


「クリアされました……秒で」


「あんなに強くしたのに!? どうして!?」


「これを見てください……」


見せられた画面は廃墟と化したダンジョンが映っていた。


「やつら、勝てないとわかるとダンジョンそのものをつぶしたんです。

 中にいるボスもがれきの下敷きになって……」


「汚ねぇぇぇ!! ちゃんとクリアしろよ!!」


生身の人間はこれだから!

卑怯な方法も卑劣な作戦も勝つためにならなんだってする。


「た、大変です! メインヒロインがどんどん奪われてます!!」


「くそっ!!」


ストックしていたメインヒロインもどんどんゲーム転生者に奪われる。

どんなにゲーム制作側が徹夜とブラック労働を重ねてももう間に合わない。


「もうあきらめましょう……。

 ゲーム転生者が来たことでこのゲームの寿命は尽きたんです……。

 メインヒロインをこの先どれだけ製造しても間に合いませんよ……」


「くそ……ハーレムばかり求めるから……」


製作陣は圧倒的物量の前に戦意を喪失していた。

そんな中、俺の頭にアイデアがふと舞い込んだ。


「いや、待ってくれ。たった1つ、試したいことがある」


「なにをするんですか? 今さら何をしても奴らの超速クリアは止められませんよ」


「ああ、そうかもしれない」


「だったら……」


「だから、奴ら同士が最大の敵になってもらえばいいんだよ」


 ・

 ・

 ・


その後、ゲーム転生者同士を戦わせることで、ゲーム進行を遅らせることに成功した。

負ければ転生者の総数は減るので、まさに一石二鳥。


目には目を。チートにはチートを。

果てのないインフレバトルで時間を使ってもらうことに成功した。


「いやぁ、よかったよかった。これでメインヒロインの増産が追い付くな!」


「あの、ゲームマスター」


「なんだ? 言っておくが感謝はいらないぞ。

 メインヒロインの枯渇問題を解決したのはゲームマスターとして当然のことだからな」


「そうではなく、メインヒロインが足りなくなりました」


「はああぁ!? なんで!? どうして!?

 ゲーム転生者たちは互いに争って時間を使いまくっているのに!?」


ヒロイン製造班は申し訳なさそうな顔をした。




「ええ、実はメインヒロインの方もお互いに争って数を減らしてしまって……」

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