第27話稽古

 劇に向けて、本格的な稽古が始まりました。


 ここで、想定外のことが桜に起こりました。


 桜に与えられた、少し多めの台詞……


 全然、頭に入らない……


 なぜ、覚えられないのか、桜は少し混乱しました。


 手伝ってくれたのは演劇教室の仲間です。


 自宅に招かれ、皆でご飯を食べながら練習をしました。


 何度も何度も台詞のやり取りを繰り返し、やっと台詞を言えるようになりました。


 しかし……


「すぐに返して」


 先生には叱られてしまいました。思い出すのに時間がかかっているのです。これは、何度も練習するしかありません。


 本番、一週間前。桜は泣きました。台詞を削られてしまったのです。


 桜の台詞は半分になってしまいました。


 それに、仲間達もなんとなく冷たいのです。


 本番を前にして皆の神経が尖っていました。


 そして本番当日。夜の公演を控えて、皆でご飯を食べていた時です。


「桜ちゃん、オレと付き合う?」


 勿論、先生の冗談です。


 でも、桜は固まってしまいました。トイレに行って胸が痛むと嘆きながら涙をこぼしました。


「本番当日に、泣く?」


 困ったような先生の声が聞こえました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る