第3話
次の日の朝。窓際の自分の席に座って、わたしは教室に入ってくる同級生達を見ていた。大抵学校に着くのが最初の方だから、どうしても毎日の日課になってしまう。
「あ、**、おはよ。毎日早いねぇ、あたしなんかと違って」
不意に、そんな声。声のした前の席を見ると、このクラスの女子の中のリーダー格の女の子。でも、その言葉は言葉通りの感情はこもっていないようで、むしろ嘲るような雰囲気を出していた。
「まあ、いつものことだよ」
とりあえず、返事を返さないのもあれだし、差し障りのなさそうな言葉を選んでそう返す。
「ふーん……。やっぱ優等生さんは違うね」
「そうだね」
皮肉のこもったその言葉に、わたしはそれだけ言って隣の席を見る。
その席には、もう主はいない。そして、二度と彼女は帰ってこない。
みんなが。
わたしが。
わたしたちが、彼女を遠くへ追いやってしまった。その事を思い出すたびに、わたしの心で何かが痛む。
そんなわたしの気持ちに気付くことなく、リーダー格の子は彼女の席を指さして笑う。
「その子ももうちょっと遊んで欲しかったのになぁ。ほら、あたしらみんな仲いいじゃん?」
その言葉を聞いて、思わずわたしは息をとめる。
「……みんな、って自分についてくる子だけだよね」
誰にも聞かれないように、わたしは口の中でそう言葉にする。何て言ったの、そうその子が言いかけたとき、スピーカーから予鈴が響く。それを聞いて、慌ててその子は前を向く。
何で、彼女が。
何で、この子が。
何で、誰も。
何で、わたしは何も出来なかったのか。
あの日から、そんなことばかり考えている自分が、何よりも嫌だった。
星の夢 美坂イリス @blue-viola
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