静寂

 あの封筒が置かれてから一週間。教室の雰囲気は最悪だった。それこそ教師が

 『なんか空気が重いな。みんな若いんだから元気出せよ」

 とか筋違いのことを言い出すほどには。

 何故かと言えば封筒である。

 わたしは最初に置かれた封筒と便箋を大量に用意した。そして同じことをした。

 つまり

 『知っている』

 と書かれた手紙をクラスメイト全員の机の上に置いたのである。でも毎日ではなかった。

 最初2日はわたしが来る前に封筒が置かれていたし、その後も1日置かれていたから、わたしが置いたのは2日だけである。結局最初に置いた人は誰だかわからない。

 けど、期待通りの効果はあった。なにかといえば、嫌がらせが止んだのである。3日目あたりで効果は出始めた。嫌がらせの度合いが軽くなったのである。

 机が消えることはなく、黒板に卑猥な言葉を書かれることもない。試しにロッカーに手提げを入れておいたが隠されることはなかった。そうして5日目にはなくなり、週をまたいでからは全くなくなったのである。

 犯人がチキンであることを分かったうえでの方法だからあまり褒められたことではないけれど、そもそも悪いのは下らないことをする方なのだからかまわない。

 あと驚いたのがクラスカースト上位の人々が夜空さんに挨拶をするようになっていた。

 『知っている』

 が、なにを知っているのか余程不安だったのかもしれない。例えば封筒を置いたのが夜空さんだったとして。知っているのは夜空さんに対する露骨な無視を指していると思ったのかもしれない。

 なんて予想でしかないんだけど。

 事実なんてわからないし、それを明かそうとも思わない。ただ、そう思うわたしが少人数派だったということが面倒である。封筒を置いた人が誰かなんて本当にどうでもよかった。

 なのに、当人からコンタクトがあった。

 別に、真実も事実も要らないんですけどね。

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