銀葉ミモザ
六佳
第1話
季節は春。
高台に見える高校に続く道の両端には、桜の木が並んでいる。
その桜の木々の下を、登校中の高校生達がちらほらと歩いている。高台には高校くらいしかないので、当然と言えば当然だ。
その高校生の中に、1人俯き、おどおどしながら歩いている少女がいる。
小柄で、肩までのふわふわとしたくせっ毛の黒髪、ブレザーや膝下丈のスカートの上からでもわかる細い手足はまるで警戒心の強い小動物のようだ。
彼女は
彼女にとっての異性は「体は大きいし、筋肉はキモいし、声は低いし、あんな怖い生き物は親兄弟以外接するのは無理」というものだ。
その親兄弟ですら、
彼女の父は昭和っぽい亭主関白といった感じでいつでも厳しいし、二人の兄は彼女のことをストレス発散用のおもちゃくらいにしか考えてない。
そして、その影響で男性全般苦手になってしまったのだ。
そんな
『綺麗ね。
手を繋いで、どこかの公園に連れていってくれた。見上げた母は笑っていたと思うが、その顔だけがはっきりと思い出せない。
“来年”は二度と来なかったが、母と一緒に見た満開の桜は、とても綺麗だった。
今見ている桜は散りかけだが、
散りかけの桜からまたひとひら花びらが散っていき、
「あっ、ごめんなさい!」
男だ。同じ学校の制服の男子にぶつかってしまった。
しかもすごい見た目だ。長めの茶髪は多分染めているだろうし、耳に光るシルバーはきっと校則違反のピアスで、背も高い。顔は整っているが、目つきが鋭くて怖い。
このまま怒鳴られたりしたらどうしようとか考えてしまい、身がすくむ。
男子が口を開こうとし、
「あらあら、大丈夫かしら?」
聞こえてきたのは、優しい声。しかし、なぜかちょっと裏声っぽい。
誰かが心配してくれたのかと思い、
周りの人はみんな、
声の主は周りにはいないのか。それか、まさか……と
「ごめんなさいねえ、痛かったわよね?桜を見てて立ち止まっちゃってたのよお。」
男子は頬に片手をあて、小首を傾げて困ったように笑っていた。
いや、まさかだった。目の前の男子が心配してくれていた。そして、その男子が男子とは思えない仕草や口調で、自分と相対していることに
これが、
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