手違いで試験をした所は陰陽師学校でした。
伊月朱李
1章 入学編
第1話 合格しちゃいました。
僕の趣味は家でのんびり過ごすこと。人と遊ぶなんて絶対にない。気を使い過ぎて疲れてしまう。
僕は疲れる事をするのが大嫌いだ。でもまあ、受験は一番頑張ったと言える。僕の夢はのんびりと静かに過ごすこと。仕事はするが、絶対に人と飲み会なんて行かない。
あの日まではそう思っていた。
僕の家はとても大きい。何か、昔金持だったらしくその時の家そのままらしい。
「真、今日は受験日ね。頑張って」
「うん、分かってるよ。母さん」
母さんはいつも僕を心配している。心配性なのだ。母さんは僕の首にお守りをぶら下げた。いつもしている、気休めらしい。
僕は家を出て、駅に向かった。正直、電車とかは大嫌いだ。揉みくちゃにされるのが耐えられないのだ。だが、今日は我慢するしかない。高校生になったら、絶対ニートになる為に!
「……あれ?ここどこだ?」
僕はいつの間にか、知らない所まで来ていた。
「さっきまで駅前にいたはずなのに。またやっちまったか」
僕は方向音痴でいつも母親に心配されているのだ。この歳になっても親は手を離してくれない。
取り敢えず入るしかないかな。
僕はそのまま真っすぐ歩いて行った。すると、人がいた。僕は道を聞く為にその人に近寄った。だが、僕は元々人見知りで人の目を見てはっきりと話せない性格なのだ。
「あの、お聞きしたい事があるんですけど」
「ん?ああ、受験生か。こっちに来なさい」
そう言うと、男の人は僕の手を引いた。
話さなくても分かってくれたようだ。ちょっと安心。
と思ったのも束の間。僕は体育館の中に通された。
え?何で?
そうずっと考えていた。しばらくして、ステージの上に人が立っていた。
「では、これより第258回陰陽師入学試験を行います」
は?陰陽師育成試験?どういうこと?
僕がアタフタしていると、女性が僕に紙を渡した。
「皆さんに配られた紙はこの入学試験で対戦する相手です。自分の名前の横に相手の名前が書いてあります」
僕は申し込み時点で何もしていないので、名前なんて書いてないだろうと思い紙を見た。だが、その考えは甘かった。
「!?何で僕の名前が!!」
「本日、初めて来られた方もいますので最初からお話させていただきます。等学園は陰陽師を育成するために作られた学園です。なので、厳選された陰陽師を入学させなければなりません。幸い、皆様の御宅は有名な家系ばかりです。なので、一言。決して殺してはなりません」
そう言ってステージの上に立った女性は笑った。僕にはその笑みがとても怖かった。
「では、1時間後スタートです」
そう言うと壇上から女性は降りた。
「お前が
「そ、そうですけど」
そう言うと話しかけて来た男子は笑っていた。
「こんなひょろひょろな奴が俺の相手かよ。拍子抜けだぜ」
僕は少し怖かった。その理由は目がギラギラしていて図体もでかかったからである。僕は大きなものは全て苦手の部類に入る。
「ま、精々死なないようにしろよ?」
そう言って高笑いしながらいなくなった。
僕は体育館を出て母さんに電話をした。だが、スマホは圏外で繋がらない。
「君、どうしたのかな?」
話しかけて来たのはさっき壇上で話していた女性だった。
「い、いえ。あの、僕初めてここに来たんですが」
「知っていますよ。開始20秒前に到着された受験者ですよね。安倍真さん。申し遅れました。私は試験官の
そう言うと首元の御守りを取った。
「ちょっ!」
「試験会場に不要な物と判断したので私が預かっておきます。大丈夫です、捨てたりはしません。預かるだけです」
僕は確かに不要な物だったと思ったから反論はしなかった。
そして、試験が開始された。
「さて、お前をどう痛めつけようか」
「お手柔らかにお願いします」
そう言うと、ニヤッと笑って僕を見た。その顔を見た瞬間、背中に悪寒が走った。その理由は怖いとかではなく、笑った顔が単に気持ち悪かっただけだ。
……あれ、僕人と顔を合わせた時はこんな事絶対に思わないのにどうしてだろう。それに、僕の周りで金色の光が飛びまわっている。
「ほう。あの子、只者ではないな」
「行くぞ!」
僕に超特急で突っ込んできた。
「うわっ!!」
「おらおらおらおら!!」
何回も切りつけていた男の顔は何だか血走っていた。
「あれは……悪憑き」
悪憑き。これは本で読んだことがある。悪霊や悪魔が人に乗り移って精神や肉体を自分のものにしてしまう憑依の一種。でも、本当に起こっているなんて夢にも思わない。
「早く浄化しなければ!」
「待て。あの子は浄化できる。あの子は精霊に愛されているのだから」
ど、どうしよう!!僕、この人と戦えるのかな?
「戦えます」
僕の耳元で誰かが囁いた。
「誰!?」
「私は木霊。あなたにいい事を教えましょう。私が言う事を復唱して下さい」
「分かった」
僕は深呼吸をして心を落ち着かせた。
「……我は清明の子孫なり。我の声が聞こえているのならば、我に力を貸しておくれ。我の身に眠りし先祖の式よ。今一度、我の御前に降り立ちたまえ。妖狐」
そう言うと、僕の前に現れたのは狐の耳を持った女性だった。
「我が主、お呼びでしょうか」
「えっと、君ちょっと力を貸してくれるかな?取り敢えず、呪文を唱え終わるまで」
「仰せのままに、我が君」
そう言うと前に立って、男の相手をした。
「……オンソバニソバウンキャリカダキャリカダウン、キャリカダヤウンハッタ。タリツ、タボリツ、パラボリツ、シャキンメイ、タララサンタン、オエンビ、ソワカ。ちょっと退いて」
そう言うと、すぐに妖狐は退いて僕は男子に向けた。
「退魔術を発動するから、皆さん伏せてて下さい」
皆はもう決着をが着いたようで僕を見ていた。そして指示通り行動してくれた。
「我の声を聞き届けて感謝する。そして、今ここにある力を持って悪霊を霊媒す!」
そう言うと、男子は雄たけびを上げて倒れてしまった。僕も、そのまま倒れてしまった。
「今年の新入生、面白い子が入ったね」
「そうだね」
「しかも可愛い」
目を覚ますと、知らない天井が目の前にあった。
「あ、目覚めましたか?」
「えっと。僕、どれくらい寝てたんですか?」
「ざっと1時間位ですね。まあ、君がした退魔術が終えるころには全員終わってましたから。全員帰りましたよ。君、凄い先祖の加護を受けてますね。私、ビックリしちゃいました。あと、これ」
渡してきたのは入学届だった。
「まあ、あんな物見せられたら入れざる負えないですよね。これは来週までに出しとけば大丈夫ですから。あと、ここのことは内密にお願いしますね。現代ではこの類は迫害されやすいので」
「わ、分かりました」
僕は返事をしてその部屋を出た。そして家に帰ったのだった。
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