「遠い帰還」(改題・再録)

青谷因

「とある航海士の帰還」



なぜ、帰ってはならないのだろう。



なぜ、誰も、喜びで迎え入れてはくれないのだろう。




どれほどの月日が流れたことか。



どれほどわたしが、ふるさとへの帰還を待ち焦がれたことか。





ながいながい、ときには自らの、生まれてから幼い日からの、遠い遠い記憶の、か細い糸をたどりながら。



何度も何度も、生まれ変わり命をつなぎながらの。





ようやくたどりついた、旅の終わりだった。







私の見てくれはもはや私ではないかも知れぬ。




だが、わたしのこころは。





ふるさとや愛する家族を思い焦がれるわたしのこころは。






何も変わってはいないのだ。





あのころと何も変わりはしないのだ。







幾度拒まれても滅びようとも。





いかなる手立てを講じようとも。





何度も何度も。




生まれ変わろう。







故郷の土へと還る日までは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「遠い帰還」(改題・再録) 青谷因 @chinamu-aotani

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る