「扉を探している男」
青谷因
第一話 高い塔
あるところに、とても大きくて高い塔が立っていました。
多くの人人が、その中で仲良く、平和に暮らしていました。
ある日、一人の男がやってきます。
その男は、その塔の中に入りたいと思っていました。
しかし、入り口の扉が見当たりません。
男は、困り果ててあれこれ考えました。
開いている窓から覗き込む人に、呼びかけましたが、入れません。
あちこちの壁をノックしてみましたが、いっこうに開かれる気配はありませんでした。
男は更に考えました。
考えて考えて・・・思いつきました。
「壁に穴を開けて、入り口を作ってしまおう」
そこを扉にすればいい。
思い立った男は、色んな方法で、壁に穴を開けようと試みました。
すると。
閉まっていた窓が一斉に開き始め、中に居た人たちが大騒ぎし始めました。
そして、なんと。
あちこちの窓から、いしつぶてやら、ごみくずが、男めがけて投げつけられたのです。
それでも、男は、壁を掘り続けます。
予想以上にかたい壁を、夢中で叩いたり削ったりしました。
やがて、その目的は、徐々に変わりつつありました。
そうしてついに、壁に穴を開けることに成功しました。
と、同時に。
高い塔は、激しい音と砂煙を舞い上げて、足元から崩れ落ちていきました。
残念ながら、男は塔の中に入ることはかないませんでした。
男はまた、新しい魅力的な塔を探す旅に出ました。
自分を受け入れてくれる扉が、必ずどこかにあることを、願って。
「扉を探している男」 青谷因 @chinamu-aotani
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