クラスごと異世界に来たのに無敵の超人が混じってた?

「はぁ…憂鬱だわ…」

「どうしたんだいハニー?」

「あんたが居るから憂鬱って言ってるのよ」

「オイオイ何をバカな事を言ってるんだハニー」


私の名前は『朝倉 沙良』平安名高校へんなこうこうに通う女子高生だ。

そして、横に居るこれが私の幼馴染みの『山本 庇』。

昔からずっと付きまとわれてて毎日がかなり憂鬱だ。

私たちの通う平安名高校は今年から共学になり一年だけ女子が少し居ると言う逆ハーレム展開を期待できそうなのだが…


「あんたが居るから…」

「ん?そんなに見つめるなよ照れるぜ」


この無駄にポジティブなのが気に入らない…


そして、そんないつもと同じ毎日が始まると思った矢先にそれは起こった。


「えーそれでは朝のホームルー…なんだ?!」


突然教室の床が光りだして光が魔方陣を描いた!

あっこれこの間読んだ異世界転移小説と同…


そして、教室から全員が消えた。




「うわぁー!?」


教師以外の全員が転んだ。

座ってた椅子が突然消えたから中腰から後ろに転んだのだ。

各々辺りをキョロキョロと見回し始めたところで声が掛かる。


「ようこそ、異世界の勇者様方」


見るとそこには数名の魔法使いのイメージの服装をした人達と一人王女様の様な人が居た。


「皆様は絶対神ルベスの導きにより選ばれたのです。この世界は現在魔族との戦争の最中でそのお力をお貸しください」


なんて良くある異世界ファンタジー展開?!

そのあと教師が文句言って帰す手段がなくて何か良くわからないアイテムでステータスを見られた。

私は『僧侶』で回復魔法が使えるらしい。


次々にクラスメイトが鑑定されていく中誰もが気付いているけど誰も触れないそれに私は視線をやった。

昨年お笑いで流行った『安心して下さい履いてるように見えるでしょ?』とか言うネタと同じポーズで片膝ついてしゃがんでる謎の人物。

私達と一緒にここに来た筈なのに何故か全裸、と言うか教室にあんな人は居なかった。


「あ…あの…こちらを着てください…」


先程のルルとか名乗ったこの国のお姫様が全裸の男に服を差し出す。

暫しの沈黙…

そして、突然立ち上がり辺りをキョロキョロ確認してこちらを見た時に動きが止まりそのまま前も隠さずに歩いてくる。


「ちょっえぇ?!ふぇぇ?!」

「おっとそこまでだぜナイスガイ」


突然私とその全裸の男の間に入り庇うように立ち塞がったのは幼馴染みの庇だった。

しかし、その全裸の男は庇を手で押し退けそのまま目の前まで歩いてきた。


「うわっなにすんだお前?!」


庇が叫ぶが気にせずに全裸の男は私の手を取り人差し指を口の中へ入れた?!


「ふぇぇ?!なに?!ふぇぇ?!」


すると全裸の男が独り言を言い始めた。


「網膜スキャン完了、指紋一致、DNA一致、声帯類似、朝倉沙良と確認。」


良く見ると男の眼球が目まぐるしく変化しそれが収まった。


「朝倉沙良だな、お前を守りに来た。お前は世界の希望だ。絶対に死なせない」

「うん、とりあえず服着てください…」





丁度その頃、人間領地と海を挟んで向こう側にある魔物領地でも魔王召喚が行われていた。


「をををっ?!魔王様の降臨だ!」


黒い稲妻が辺りに飛び散り闇の球体が現れそれが消えると中から禍々しいオーラを備えた存在が現れた。


「我は破壊の魔王『デスゲイザー』我を呼び出したのは貴様等か」

「はっ!我等魔族の国へようこそおいで下さいました。」

「見たところお前たちは魔族の様だがこの世界にも人間が?」

「その通りです。我々は人間族とずっと戦いを続けておりまして・・・」


魔物の国と人間の国の事情を説明を終えて魔王と会話していたアークデーモンは魔王の斜め後ろに居る全裸の人間の男に見える生き物にやっと気付いた。


「ところでデスゲイーザ様、その後ろのヤツは人間に見えるのですが・・・」

「ん?なんだこいつは?お前達の奴隷か何かではないのか?」

「いえ、多分デスゲイザー様と共に呼び出された運の悪い弱き生き物でしょう」


そう言ってアークデーモンと魔王が視線を送った時にその人物は顔を上げて立ち上がった。

短い金髪に尖ったような鼻、地球ならアメリカ人だろうと一目で言われるであろうその姿はこの異世界でも少し珍しい顔立ちではあったが人間は全て同じに見える魔物にとっては関係なかった。


「どれ、デスゲイザー様の最初の生贄にしてやろう」


そう言ってアークデーモンが近寄った時に全裸の男はアークデーモンを見て口にする。


「朝倉沙良は何処だ?」

「はぁ?何言ってんだ?死んどけや!」


アークデーモンがその巨大な拳を男にぶつける!

男の足元が割れてクレーターの様ひびが入りに少し沈む。

だが男は何事も無かったかのようにそのままの姿勢で立っていた。


「もう一度聞く、朝倉沙良は何処だ?」


自らの攻撃が全く利いていない事に驚いたアークデーモンだったが直ぐに打撃は利かないのかもしれないと魔法攻撃に切り替える!


「焼け死ね!『火炎魔法火柱!』」


男の体を中心に炎の柱が出現しその体を一気に焼く!

しかし、男は焼かれながら火柱から手を出してアークデーモンの腕を掴んで・・・握り潰した。


「いぎゃああああああ!!!!」


地面に膝を付き握り潰された自分の腕に回復魔法を掛けて治療しているアークデーモンの前に火柱から歩いて出てきたさっきの存在が立つ。

その姿は炎に焼かれ皮膚も何もかもが焼かれて骨格だけになっていたのだがその骨格がまるで機械の様であった。


「ば・・・化け物・・・」

「朝倉沙良は何処だ?」

「し、知らない!俺はそんなヤツは知らない!」


アークデーモンは驚くしかなかった。

全身を火柱に焼かれて骨格だけになっていた筈の男の皮膚がみるみる再生し元通りの姿となったのだ。

探し人を知らないと言ったアークデーモンには最早興味は無いのかその男は歩いて外へ出ようとする。


「おっと、貴様この魔王デスゲイザーを無視して行くつもりではあるまいな?」

「朝倉沙良は何処だ?」

「誰の事か分からないがとりあえず死んでおけ!『グラビジャガン』!」


それは対象の周囲の重力を20倍にする殺戮魔法。

通常の生き物だと内臓の重量が重くなりすぎて内臓を損傷して死んでしまうのが普通である。

だがしかし、その男の足が地面の中に沈んでいつだけでそれ以上の効果は無いようだった。


「そ・・・そんな馬鹿な・・・」

「朝倉沙良は何処だ・・・」


まるでその重力にはもう慣れたと言わんばかりのその男は魔王を無視して重力20倍を受けながら地面に埋まる足を普通に上げてその部屋から出て行こうとする。


「待て貴様!」


別の魔物がその男を止めようとしたのだが・・・


「馬鹿止めろ!」

「ぐべぎゃ?!」


一瞬にして重力20倍に耐えられず内臓が破裂して死に至る。

有名な話でクジラが陸に上がると死ぬと言うのは酸素が理由ではなくその内臓が重力に耐え切れないからだと言う話がある様に人間よりも遥かに強い魔物であっても内臓までは強くは無かった。


「朝倉沙良は何処だ?」


その男は目の前の死んだ魔物に質問をする。

しかし、既に内臓が破裂して死んでいる魔物は答えない・・・

男はその魔物に手を伸ばしその体を片手で持ち上げる。


「朝倉沙良は何処だ?」


重力20倍がその体を中心に発生しているのにも関わらず自分よりも倍くらい大きな魔物を片手で持ち上げるその姿に魔物の誰もが絶句した。

そして、答えないその魔物を少し見つめ・・・

その腹部に手を突き刺して止めをさして捨てる。


そのままその男はその場を出て行くのであった。






あれからステータスを各々確認されたのだがあの全裸の男、名を『アーモンド・スワルツネガー』と名乗った以外はステータスすらも見れなかった。

そして、数日が過ぎこの世界の常識を学んだ私達は城から外に出てとある場所へ移動した。


「今日はこのテンプレの洞窟でレベル上げを行う!」


国の騎士達と共に勇者としての力を強める為に国から一番近い洞窟にレベル上げに来た一同。

騎士団長のカムイさんが先導してくれて戦闘訓練を行っていたわけだが・・・

テンプレ通り宝箱の近くに用意された転移の罠でテンプレ通り大きな橋の上に転移させられテンプレ通り目の前には巨大な魔物ケルベロス、後ろには大量の鎧騎士・・・


「ハニーきっと俺はここからあのケルベロスと一緒に皆を守って落下してチートな力を手に入れて戻ってくるんだ!」


何処かで読んだ様な物語的な展開を想像して自分が主人公だと言い張る庇だったが・・・


「なんだあいつは・・・」


そいつはケルベロスの背後から歩いて来た。

黒い衣の様な物を身にまとい何かを引きずって現われた金髪の男は目の前に居たケルベロスを払いのける!


「GYAAAAAAAAAAA!!!」


その圧倒的パワーによりケルベロスは橋横に吹き飛ばされて転がった。

そして、その金髪の男が引きずっていた何かをこちらに投げつけて来た!


「皆避けろ!」


騎士団長の叫び声と共に全員が横に移動して落ちて来たそれに驚愕する・・・

それは巨大な獣モンスターベヒーモスであった。

まず間違い無くこのメンバーでは勝つ事なんて出来ない強力な魔物だ!

アーモンドは私を軽々と抱き上げ横へ移動して避けた。

橋が大きく揺れて皆の足元が揺れてよろけている中アーモンドだけは相手を見つめる。

それを軽々と投げつけて来たそいつは無表情のまま口にする・・・


「朝倉沙良を確認・・・抹消する」

「逃げるぞ、朝倉沙良」


アーモンドが私をお姫様抱っこしたまま鎧騎士の方へ向かって走り出す。

後方で鎧騎士を騎士団の人達が抑えていたのだがアーモンドは気にせずにその鎧騎士の中へ飛び込み踏みつけ蹴り上げながらその中を驀進する。


その蹴りに吹き飛ぶ鎧騎士達は1体1体が鍛えられた騎士団の人1人と同じくらいの強さであったにも関わらず次々と蹴りで吹き飛び破壊され全員が唖然とする中、金髪の男もその中へ飛び込んできた。

とても人間の跳躍とは思えない程空高く飛び上がり一気にアーモンドの方へやってきたそれに向かってアーモンドは鎧騎士を蹴り上げそいつに向かって飛ばす!

空中でぶつかりそいつは弾かれて頭から地面に落下する。

だが直ぐに何事も無かったかのように起き上がりそいつは起き上がり近くに居た騎士団の持っていた槍を奪い取って投げつけてくる!


「えっ?!」


槍を持っていた騎士団の人は自分の腕を引き千切って槍を奪われたのに何が起こったのか分からないまま血が吹き出る自分の無くなった肘から先を見つめて遅れ叫び声を上げる!


「うわあああああああああああ!!!」


だが誰もがそんな事は気にしない。

投げられた槍がアーモンドの胸を貫いて刺さっていたからだ。

どう見てもそっちの方が致命傷だった。

沙良はアーモンドが槍が刺さる直前その体を持ち上げられダメージは無いのだがその様子に驚く。

しかし、金髪の男はそのままアーモンドに向かって走りこんでくる!


「ハニー!!!」


庇がそいつが沙良を狙っているのを理解していたので名前を呼びながら手に持っていた剣をそいつにむかって投げつける!

だが剣は投げるものではない、それは大きくそいつの頭上を超えてアーモンドの近くに落ちた。

万事休すか!

誰もがそう考えた時にアーモンドは近くに居た騎士団の人間に沙良を放り投げて慌てて騎士の一人が沙良を転びながら受け止める、それを目で追っていた金髪の男にアーモンドは胸に刺さっていた槍を抜いてそれでそいつの足を払う!

だが槍はそいつの足を少し止めただけで直ぐに折れてしまいそいつは沙良の方へ向きを変えた。

その隙を逃がさないアーモンドは庇の投げた剣を拾ってそいつの頭に叩き付けた!

刃物で頭を攻撃したのにも関わらず金属がぶつかり合ったような音が響きそいつの足が地面に減り込み少し沈む!

まるで痛覚が無いようなそいつは言葉も発さずアーモンドの振り下ろした腕を掴んで自分の頭に当たって曲がってしまった剣をまるで気にしないままアーモンドを持ち上げ地面に頭から叩きつける!


「きゃああああ!!」


女生徒の悲鳴が聞こえアーモンドの頭がぶつかった音に硬直していたのが解けたのだと誰もが理解したがアーモンドとそいつの戦いは止まらない。

直ぐに起き上がったアーモンドは近くの砕けた鎧騎士の破片を持って金髪の男の顔面に叩き付けた!


バギャン!!


明らかに通常の生活している人が聞いたことの無い様な音と共に裂ける顔面!

だが少し仰け反っただけで金髪の男は踏みとどまる!

まるでそれが分かっていたかのように更にアーモンドは次々と落ちていた鎧騎士の破片で殴りつける!


ヴァギィン!

ドビャン!

ズギョン!

ビャギャン!


とても聞いた事の無いような大きな音が次々と鳴り誰もが目を細める。

しかし、金髪の男は気にした様子も無くアーモンドの顔面を掴みまだ残っていた鎧騎士達の方へそのまま投げつけた!

鎧騎士の体がアーモンドの体とぶつかり相手をバラバラにしながらその破片により傷を大量に負ったにも関わらずアーモンドは起き上がる!

そして金髪の男にタックルをかます!

誰もがその時に気付いた。

金髪の男の傷が治り始めているのだ!


「お前等アーモンドが避けたら魔法の一斉射出行くぞ!」


騎士団長がやっと声を発しその命令に反応した全員が構える!

アーモンドは橋の隅にまで金髪の男を押しやるが上から振り下ろされた両手で背中を強打され地面に屈する!

そして、後頭部を踏み抜かれ地面に顔面が埋まる!


「今だうてぇ!!!」


斜線上からアーモンドの体が消えた事で騎士団の中で魔法を使って後方支援をするメンバーによる一斉魔法攻撃がそいつの体にぶつかる!

少しずつ、少しずつその威力に仰け反り橋の縁まで移動したがそこでそいつの動きも止まる。

あと一押し、後一押しが足りない!


「おちろー!!!!」


そこに騎士団長が投げつけた斧が飛び込む!

その斧が金髪の男の胸に突き刺さり最後の一押しとなり魔法攻撃を受けながら橋の下へ落下していった・・・

全員疲労が溜まりつつも誰も欠けなかった戦いであったがアーモンドが起き上がり沙良の手を引いて洞窟から出ようとする。


「ま、待て!少し休んでから・・・」

「あいつは直ぐに追い掛けてくる、俺は沙良を守る」


頭部は陥没し胸には槍の穴、あちこちも大小様々な傷を負っているのに気にした様子も無いアーモンドはそう言って洞窟を歩いて出ようとするので全員がその後を追う・・・

誰もがそのアーモンドの傷穴から見えたそれに言葉を失った。

骨格が金属だったのだ・・・


これは人間族と魔族との間に戦争が起こっている世界で互いに呼び出された中に混じっていた超人同士による朝倉沙良を狙う者と助ける者により戦争どころではなくなる話。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る