占いとこの世の終わり
桜水城
1
「この世の終わり」にはとんでもない奇跡が起こる。そんな伝説がこの地にはある。
私はそんな伝説を、信じることなどできないまま、大人になった。けれど、「この世の終わり」は確実に私の身に迫っていた。
何百年も続く占い師の家系。その末裔である私が亡くなったおばあちゃんから教わったカードの占いで、今までに見たこともないような結果が出た。
「一週間後、隕石が落ちて私の住んでいる地域一帯が消滅する」
正直、わけがわからなかった。カード占いなんかでこんなにはっきりとこの世の終わりを予言されるなんて。でも、占い師に生まれた私には、この占いを切って捨てることなどできなかった。
そこで、まず考えられる選択肢、一つ目は「この家を捨てて、逃げる」。これは即座に却下した。なぜなら、占いではどこまでが危険で、どこからが安全圏なのかがわからなかったというのもあるが、私は生まれ育ったこの家が大好きなのだ。捨ててどこかへ逃げるなんて考えられなかった。
そこで二つ目の選択肢、「隕石が落ちてくるのを回避する」。これはどう考えても無理な相談だ。隕石の軌道を変えることなど、一介の占い師の私にできるはずがない。ミサイルで破壊するとかそういうことは地球防衛軍みたいなヒーローのすることだ。こんな湖のほとりの小さな村にそんな存在はない。
最後に残った選択肢は、「静かにこの世の終わりを待つ」。要は何もしないということだ。だが、私はそれを選んだ。世界は終わる。私の命も尽きる。それでも良いのだ。いや、良くはないが、私はこの生活を変えることなどしたくないのだ。この家から離れたくもない。
そして、一週間の猶予期間を心穏やかに過ごそうと決めた私の前に、突然それは現れた。冬のはじまりにそなえて、近くの森に焚き木を拾いに出かけた日のこと。人里の近くだからと安心しきっていた私の前に、現れたのはねずみ色の毛皮をまとった……オオカミ。(オオカミなのにねずみ色とか意味がわからないが)
私は終わりを覚悟した。一週間後に待っていたとはいえ、いざこの命が尽きるとなると、とんでもない恐怖が襲うものだ。食べられて死ぬのだろうか、噛みつかれたらさぞ痛いことだろう、何もかもが怖くて怖くてたまらなかった。しりもちをついた私に、オオカミは馬乗りになって覆いかぶさってきた。(オオカミなのに馬乗りとか意味がわからないが)
次に襲ってくる痛みを恐れて私は目をつぶった。だが、しばらく経ってもオオカミは噛みついては来なかった。恐る恐る閉じていた目を開けると、そこにいたのはオオカミではなかった。
「たべられるとおもった? ざんねん、ぼくはニンゲンをたべるしゅみはないんだ」
そこにいたのは真っ裸の少年だった。ねずみ色の髪は肩にかかるくらいの長さで、耳があるはずの場所は隠されていた。ハシバミ色の瞳がくりくりと私を覗き込んでいる。そして、髪の毛の中からぴょこんとケモノの耳が顔を出していた。(耳が顔を出すとか意味がわからないが)
「おねえさん、ぼくをひろってよ。おうちにつれていって」
無邪気な顔で笑う少年を、私は拒むことができなかった。私は彼を連れて、焚き木を拾い集めながら家に帰った。
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