幕間:01

「今、私の事見たでしょ」


 お決まりになった台詞を吐いて、彼女は客に一瞥をくれてやった。

「チィ。トイレから出てきて目が遭っただけだろ」

 客は言って、古びたモッズコートのポケットから硬貨を数枚投げた。

 一つ残らず彼女はキャッチして、カウンター席へ戻っていく客から目を逸らす。

 今まで沢山の土地を訪れていたが、自分の事を見るなり、突然金を差し出してくる街は此処が初めてだった。

 それをいいことに、都合良く金を巻き上げる術を手に入れ、あろう事か変な店のマスターにも拾われた。

『街で五本の指に入るクソ女』なんて、蔑称までおまけに付いてきてしまったが、それが自分なのだ、と一人納得していた。

 

 私はクソ女。

 今日も見惚みとれていた住民から金を巻き上げる。

 それだけ考えて、生きていよう。

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