遣欧艦隊奮戦記

ぷよ夫

第一章 遣欧艦隊 いざ欧州へ!

欧州へ!

第壱幕 地中海突破作戦:上

      壱

 巡洋戦艦「金剛」の艦橋に、一人の漢(をとこ)が仁王立ちになっている。

 『隻眼提督』とは彼の事だ。

 彼は第一次遣欧艦隊司令、栗田中将。

 山口中将と並ぶ、帝国海軍きっての猛将である。

 そこで何を感じ学んだのか、ジュットランド大海戦から生きて帰って以来、それまで比較的穏やかだった性格が一変、鋼のような厳しさと機関車のような力強さを持つようになった。

 その代償に、右手の小指と薬指、そして右目を失った。

 率いるは、ドイツからの猛烈な空襲に見舞われている英国への援軍として、急遽編成された第一次遣欧艦隊。

 巡洋戦艦「金剛」「比叡」、「最上」型軽巡洋艦四隻、そして中型正規空母「飛龍」と同型の「瑞龍」を中核とし、軽空母「龍驤」「祥鳳」、駆逐艦等多数を擁するかなり大規模な艦隊だ。そして、最大の特徴は航空機や部品が満載された、十隻あまりの快速輸送船だ。

 これら高速艦船で、インド洋からスエズを通り、地中海と大西洋を強行突破して一路英国に向かうのである。


 インド洋にて英国の戦艦「プリンスオブウェールズ」「レパルス」と数隻の駆逐艦からなる艦隊と合流し、ともに地中海を渡ろうとしている。

 そして、艦隊はインド洋とスエズ運河を無事に渡り終え、地中海へと乗り込んだ。

 夜間の潜水艦や航空機、さらにはイタリアの新鋭戦艦「リットリオ」級を擁したイタリア艦隊など、危険は多い。

 それでも、シチリアあたりまでは比較的安全だ。足の短いイタリアやドイツの航空機は心配に及ばぬし、昼間なら水上機や艦載機で潜水艦も発見できる。

 夜間はさすがに潜水艦が脅威となり、外周を警戒中の駆逐艦などが狙われた。

 警戒は常時厳に行われたが、円陣(この当時輪形陣という言葉は一般的でなかった)外周の駆逐艦が三隻ばかり狙われ、スエズからマルタ島付近まで移動する間に沈められている。

 

 

      弐 

 シチリア沖、マルタ島横を駆け抜けて二時間ほど経つ。

 地中海の空が白み始め、まさに夜が明けようとする頃、空母「飛龍」の艦内は緊張に包まれていた。 

 この海に明るい英国艦隊の先導で、夜明け前にイタリア空軍の攻撃圏内を突破したいところだが、快速船を集めたとはいえ、従えた輸送船は高速艦艇と比べたら足が遅い。

 これでは間に合わわない。

 そのことは事前の計算で分かっていたので、これから数時間は敵機に対して要警戒だ。。

 一同、夏の短い夜が恨めしくてならない。

 飛行甲板上には、並べられるだけの戦闘機が並べられ、発進のときを待っている。日没と同時に休息を命じられていた搭乗員たちは、順番に叩き起こされて愛機に向かっていった。

 上空では、先行して九七式艦攻が警戒をしている。

 水上機も警戒に使いたいが、一気に駆け抜けてしまいたい都合上、止まって収容せねばならないそれらの使用は見送られたいた。

 そして日は昇り、緊張はさらに高まった。


 それからおよそ一時間。

 艦内にけたたましいサイレンの音が鳴り響いた。

「東北東ニ敵編隊発見。数オヨソ百」

 栗田のもとに、警戒機からの通報が入った。

 教科書通りの太陽を背にした攻撃だ。

「航空隊、発進用意!」

 怒号のような号令がかかる。

 同時に、艦隊は一斉にやや北に進路をかえて風に舳先をたてた。

「第一陣、発進せよ!」 

 甲板上で出番を待っていた零戦、正規空母「飛龍」「瑞龍」の各二十四機、軽空母「龍驤」「祥鳳」の各十二機が、上空の警戒機からの連絡を受けて一斉に飛び上がった。

 同時に、第二陣の機体が次々と艦内から飛行甲板に揚げる作業が始まる。

 

 西に向かう艦隊の「しんがり」をつとめる「金剛」からは、前方でわらわらと見方の戦闘機が舞い上がるのが見えた。

 直後、マスト上の見張りからの敵機確認の報告が入る。「しんがり」であるが故に、発見も早い。

「対空戦闘用意!」

「金剛」の艦長はすぐさま命じた。

 艦内では多数の将兵が慌ただしく動き回っているが、一人不満そうな男がいた。

「退屈でかなわんワイ」

 他ならぬ、隻眼提督栗田中将である。

 側にいた参謀が「は?」と目を丸くして見ている。

「いや、神君、何でもない。巧く動いておるよ。仕事を続けてくれ」

 とは言うが、栗田は憮然としている。

 (これじゃお地蔵さんか、達磨さんだ)

 要は順調すぎで、ヒマなのだ。

 夜中にシチリア近くを突っ切るのも、ここら辺で空襲にあうのも、ほぼ予定通り。潜水艦出現の可能性も。

 常識通り行くしかないこと故、対策はほとんど参謀がこなしてしまった。

 作戦会議中も、栗田は上座で「でん」と座っているだけ。

 そこに、敵第二波接近の知らせが入った。今度は北からだ。

「戦闘機隊、第二陣、発進せよ!」

 栗田は、たまる鬱憤のせいで無駄にでかい声で命じた。

 それを、周りの将兵は「もっと気合いをいれんか!」という事と受け取り、いっそう気を引き締めた。

 第二陣、先発とほぼ同数の戦闘機隊が次々と舞い上がるのが「金剛」からよく見える。

 ほどなくして、艦隊東側と北側で航空機同士の熾烈な戦いが始まった。

 栗田は窓に近寄って様子を見てみた。

 戦っているのは、日本側の全てが零戦、対するはフィアットとマッキ。ややおくれて攻撃隊の双発爆撃機がついて来ているが、まだ機種までわからない。

 よく見ると、脚出しの単葉機が混ざっている。ドイツ製の急降下爆撃機Ju87‟シュツーカ”にちがいない。

 時折機銃とおぼしき火線が走り、ぱらぱらと飛行機が墜ちていく。

 その全て、ではないが、大多数が零戦以外のものだった。

 ほとんど一方的に墜とされているフィアットとマッキだが、零戦隊がそれらに気を取られている隙をついて、爆撃機隊が向かって来た。

 東の編隊は「金剛」「比叡」に、北の編隊は艦隊のずっと前の方、英国の戦艦がいるあたりに向かった。

「ほぉ、空母は無視かね。輸送船も。それは助かる」

 栗田はぼそっと言った。

「自分もそう思います。目的優先でありましょう」

 参謀の神少佐が言った。

「大物を狙いたい気持ちは分からんではないが、こちとら飛行機を英国に送るのが本来の任務だ。旧式巡洋戦艦の一隻や二隻くれてやらんでもない」

 と、腕組し外を見ていると、艦長が命じる声が聞こえて来た。

「撃ち方、はじめ!」

 鎌首をもたげた高角砲群が、高度を落として接近する敵機に向かって『ずだんずだん』と撃ちかけていく。

 「金剛」の高角砲兼副砲は、速射性と使い易さに優れた一二・七ミリ二連装砲。それが、ジュットランドで大破した第三砲塔の跡地に、なんと四基ずつ三列、全部で十二基も搭載されている。

 さらに、英国製のポンポン砲が加わって、滝を逆さにしたような猛烈な射撃が加えられた。

「なかなか、あたらねえな――おっ」

 この当時の対空砲は、当たらないのが当たり前。だが、これだけ撃ちまくれば、たまには当たる。

 盛大に無駄弾を消費しながら、二機三機と撃墜したところで、双発機は適当なところに爆弾を落として引き返してしまった。あさっての方に水柱があがっている。

 それをみて、艦長が「撃ち方やめ」を命じた瞬間、見張りの誰かの叫び声がした。

「急降下ぁ!」   

 本命は上にいた。

 艦長が慌てて取りかじ一杯の回避行動を行うが、時既に遅く真っすぐに爆弾が落ちてくるのが、誰の目にも分かった。

「伏せろ!」

 窓際にいた栗田は、叫ぶと同時に側にいた若い兵をふん捕まえて共に伏せた。

『ずど―――ん』

 窓ガラスが割れ、爆風が体の上を通過していくのが分かる。

 ひと呼吸置いて、むっくりと栗田が起き上がった。背中のガラス片がばらばらおちる。

「死屍累々・・・・・」

 見回すと、艦橋は死体、ならびに「死体のような物」の展示場になっていた。

「あひゃぁ」

 一緒に伏せた若い兵がそれを見て腰を抜かしてしまった。 

「おい、貴様。五体満足なんだから、医療班をよんでこい」

 栗田は兵を起こすと、命令を下した。

――こんな時は仕事を与えるのが一番だ。俺もそうだった。

 撃ちまくられ、穴だらけになった「榛名」での自分の姿をみているようだ。

 あのとき、爆風の後気がつくと、周りで生きてるのは数人だけになっていた。

 頭から血を流しふらふらになりながらも「歩けるのは貴様だけだ」という、上官の命により、伝令に走った。そして、伝え終わるとその場に倒れたらしい。気がつくと、英国の巡洋艦で応急処置をされていた。

「はっ!医療班を呼んで参ります」

 兵士はびしっと敬礼をし、回れ右をして、三歩進んで転倒した。

「だれじゃ!人を踏んだのは!」

 突然神少佐が起き上がった。

「少佐、生きてるなら早く部署につけ! コケてないで、貴様も早く呼んでこい!」

 怒鳴りつけられて二人はあわてて動いた。

「さて、ここは俺が舵を握るしかないのか」

 栗田は、一声怒鳴った後、もう一度周りを見渡て言った。

 死体、死体のような物、死んでるっぽい物、あらためて死屍累々と感じる。

 慣れない艦であるが、舵はとれる物が握らねばならない。 

「副長!! 聞こえるかぁ! いま、どこじゃ!」

 栗田は、舵の近くの声伝管に向かって声を張り上げた。

『ハイカンチョー。シタニオリマスー』

 声伝管特有のくぐもった声で返事が返って来た。

「艦長不在、貴様が舵取りをかわれ! あと、電気屋もつれこーい!」 

『リョウカイ、タダチニムカイマース』

 返事を聞くと栗田は「ふん」と鼻を鳴らし、憮然として外の様子を見た。

 第二砲塔の天蓋に丸いシミがのこっている。どう見ても爆弾の跡だ。

 改装の際、遠くから見ると巡洋艦に見えるようにしたため、「金剛」はやや低めの艦橋を採用している。それがあだになって、ほぼ目の前での爆発とあいなったようだ。一番装甲の厚いところにぶち当たったため、艦自体の被害はほとんどないのがせめてもの救いだった。

 周りを見ると、「比叡」も一発食らったらしく、高角砲のあたりから小さな煙を上げている。

 結局、食らったのはさっきの一発だけだった。

 敵はすぐに引き上げてしまったのである。

 そして、もう一度艦内に目を戻すと、神少佐が奇麗な姿勢で突っ立っていた。

「コラ、何をしておる」

「見張りであります」

「アホか、貴様は。一人で見張ってどうする。俺の名を使っていいから、兵隊を集めてこい!」

 その神と入れ替わりで、医療班が艦橋になだれ込んで来た。

 栗田が一言「なんとかしろ」と言うと、班長が「なんとかします」とだけ返事をし、てきぱきと仕事を始めた。

「いきてるぞー」「こっちはだめだー」「こっちもー」「のびてるだけだ、水クレー」「こっちも水ー」「痛み止めうつぞー」「そのくらいじゃ死なんぞ、しっかりしろ」

 医療班のそんな声が艦橋のあちこちで聞こえる。

 そのうち、のびてるだけだった数人がむくむくと起きて来た。それなりに怪我はしているが、応急処置で十分な者ばかりだ。

「よーし、よく生き残った。まだまだ終わりにあらず、部署に付けぃ!」

 栗田は大声でハッパをかけた。

(本来、艦長の役目だが)

 そうは思うが、艦長はもういない。

 そこに、やや遅れて副長が補充の将兵を集めてやって来た。

「副長の坂田中佐であります」

「ごくろう、舵を替われ」

「坂田、舵を替わります! しかしまぁ、酷い有様ですね」

「まったく、一番の年寄りが生き残っちまったわ」

「しかし、あなたに死なれては、艦隊運用に支障をきたします」

「ふん、そういうことにしておこう。しかし、優秀な人材が失われたのは、今後響いて来るであろうな」

 渋い顔をする栗田。

 そこへ、艦橋のあちこちでゴソゴソやっていた「電器屋」こと技術兵たちのを代表して、‟森田電気”と書かれたテヌグイを頭に巻いた親方が「応急修理、完了!」と報告に現れる。

 これで、一通り通常通りの仕事が出来るようになった。

 死傷者の方もだいぶ片付いており、血なまぐさい臭いが残るものの、どうにか機能を回復した。

 

 

      参

 大規模空襲はそれ一回で終わった。

 迎撃にでた零戦は百五十機。そのうち十機が未帰還、十五機が損傷が酷いため着艦と同時に海へ捨てられた。機体については、予備機は山ほど持って来ているので心配に及ばないが、失われたパイロットは戻って来ない。

 艦船の被害は、「金剛」は小破(爆風で艦橋一部と機銃などが損傷した程度)「比叡」も高角砲が一基破壊され小破。英国戦艦も、それぞれ爆弾を食らっているがいずれも損傷軽微。ほかにも、細かい被害が報告されているが、戦力には影響なかった。

 なんと言っても、誰も空母や輸送船を狙って来なかったのがありがたかった。


 だが数時間後。

 昼前のことである。

 上空を警戒していた艦爆から敵機襲来の知らせが入った。

 その数三十程度。

 迎撃機が六十機ほどあがり、すぐさま追い払ったが、追撃中の零戦隊から敵機が逃げていく先に大艦隊を発見した。

 北西の方向、訳二百二十キロ。

「艦載機と思われます。存在を誇示するために飛ばしたと考えられます」

 と、神。

「シチリア海峡をでたところで、待ち伏せか。そんなところだろう」

 栗田が答える。

「こちらの動きなどとうにバレてますから、どのみち補足されるでしょう。それに、イタリアの艦隊は足が速い」

「英国のホーランド提督と連絡を取ってみよう」

 栗田と神が話合い、人手が足りないため神が自分で英訳して、通信兵に渡した。

 そして、すぐに返事が戻る。

「栗田指令、ホーランド提督はやる気であります。あと、追伸として敵陣容が添えられております。空母一、戦艦五、重巡三乃至四、軽巡四乃至六、その他二十隻前後。北西におよそ二百キロ」

「大艦隊だな。イタリア海軍のほぼ全力ではないか」

「なお、リットリオ級とおぼしき戦艦が三隻含まれております。三隻!?」

 リットリオ級は長砲身十五インチ砲を備えた伊海軍の新型艦。ドイツに尻を叩かれ(援助も受け)今年の二月と四月に、一番・二番艦が繰りあげ竣工したと言う情報はあったが、三番艦のことは神も初耳だった。

「うむ、まともにどつき合いが出来るのは、英国のプリンスなんとかだけか」

「時間的に厳しいですが、母艦の航空隊を出しますか?」

 たかが二百キロ、されど二百キロ。お互いに三十ノット(時速約五十五キロ)で接近したら、二時間で詰まる距離だ。

「出そう。準備を指示してくれ」


 空母「飛龍」「瑞龍」の艦内は、にわかに慌ただしくなった。

 補給を終えた先発の戦闘機隊を飛行甲板にあげ、艦爆や艦攻に対艦装備を付ける。今回は、載せて来た艦載機の大半が戦闘機なので、それほど手間はかからない。また、近距離なため、後発の戦闘機には落下タンクは付けずに、小型爆弾でも付けておけ、という指示だった。

 そして、一時間ほどが経つ

 準備の出来た部隊から順次発艦し、上空で編隊を組んでいく。

 この一時間の間に、空母艦隊は南よりに進路を取り、伊艦隊と距離を置いていた。逆に、水上戦闘艦部隊は、真っすぐ伊艦隊を叩きに向かっている。


 シチリア海峡を抜けたところで防御用の円陣は解かれ、栗田率いる欧州派遣艦隊は、北西に向けて三列の単縦陣となって伊艦隊進撃していた。

 先頭が戦艦「プリンスオブウエールズ」擁する英国艦隊。

 そのすぐ後方に、重雷装艦「大井」「北上」を先頭に、しんがりが「鬼怒」、そして間に陽炎型駆逐艦5隻という陣容の、日本の水雷戦隊。

 さらに右後方、少し遅れて「金剛」を旗艦とする砲戦部隊が続く。巡洋戦艦「金剛」「比叡」を先に「最上」級が後ろと、ごく標準的な単縦陣だ。

 頭上を、空母から飛び立った攻撃隊が通り過ぎた。

 その数約八十機。

 うち、攻撃・爆撃機は四十機ほどだけ。それが、持って来た機のほぼ全てだった。

 一方、先発隊は四十機程度だったが、瞬く間に伊空母「アクィラ」からの迎撃を排除し、上空を押さえてしまっている。こうなっては、着弾観測機や偵察機も飛ばせない。伊艦隊としては、目を塞がれた格好だ。

 互いの距離は百キロ。飛行機にとっては、目と鼻の先だ。


 片道千キロ渡洋すらこなす日本の母艦航空隊にとって、二百キロにも満たない距離での戦闘は完全に想定外だった。戦場についてもまだまだ元気。

 逆に、伊艦隊としては、まだまだ元気な攻撃隊にとりかこまれたことになる。

 ここぞとばかりに、艦攻・艦爆は大物狙いに取りかかった。

 日本側の感覚では「たかが四十機」だが、襲われる側はあまりに無防備だった。

 まず、魚雷を積んだ九七艦攻が、最大のオオモノ、新鋭戦艦「リットリオ」と「ヴィットリオ・ヴェネト」の左右から殺到した。

 迎え撃つ二艦は、必死で対空射撃を行うが、防空陣形を取っていないこの状況では有効な弾幕を張ることが出来ない。さらに、両側に艦攻が分散したため、どちらにも回避行動がとれない。

 とくに先頭の「リットリオ」には艦攻十二機と艦爆六機が集中した。

 攻撃は訓練を見ているかのようなスムーズさで左右と正面から同時に行われ、わずかの間に魚雷五発(左一、右四)と二五○キロ爆弾四発が直撃、爆弾二発が至近弾となり「リットリオ」を痛めつけた。

 最新鋭「リットリオ」が、がっくりを行き足を止め、もうもうと煙を吐きながら大きく右に傾いていく。

 すぐ後方では、「ヴィットリオ・ヴェネト」が左から一発。右から二発の魚雷を、さらに爆弾二発を受けてやや速度を落としていた。

 そして、艦隊後方の空母「アクィラ」に、艦爆隊が群がった。

 「飛龍」より一回り以上大きな立派な空母だったが、四発の直撃弾を受け、艦内から火災を発生した。

 そして、その炎は航空燃料に引火し、大音響とともに火柱をあげた。

 一分後、空母「アクィラ」は真っ二つに折れ、舳先とスクリューを海上にとどめるだけの存在となっていた。

 ――轟沈である。

 その他、零戦隊も持っていった小型爆弾を適当に落とし、一部が小型艦に命中して損害をあたえた。

 史上初の空母部隊による艦隊攻撃であったが、大成功である。

 もっとも、迎撃機不在の状況で、この程度できなくては困るという話もあるが。

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