第12話 お姉さまと弟の行方

「ぐあぁぁぁ……」


 消し炭になり消えていくミミック。俺たちがその様子を見ていると、不意に激しい光が沸き起こった。


 バラバラバラッ。


 石つぶてのような音がし、地面に何か光る物が散らばる。


「なんだこりゃ!」

「宝石だ!」


 スキンヘッド兄弟が、ミミックからドロップした宝石に群がる。


「あっ、ずるいぞ! 俺たちが倒したんだからな!」


 俺も慌てて近くに転がってきた巨大な紫の宝石を拾い上げた。


「おしっ、このデカいのは俺が貰うぜ!」


「お姉さま、すごい! 宝石が沢山!」


 俺たちは夢中になって地面に散らばった宝石を拾い集めた。


 こんなに沢山の宝石初めて見た。これは売ったらかなりのお金になるのでは!?


 もしかしてこれは美味しい仕事かもしれない。俺は心の中でほくそ笑んだ。


「ちっ、こうなりゃもっと大きな袋を持ってくれば良かったぜ」


 俺が地面に散らばる宝石を拾い集めていると、スキンヘッド兄弟が呟いた。


「兄者、どうやらこのモンスターでは無さそうだな」

「ああ。弟を攫ったモンスターはこいつとは別のヤツだ。もっとデカいギタイブクロだった」


 その言葉に、俺は少し引っ掛かりを感じる。


「弟を攫った……?」

「どういうこと? ここには人間を攫うモンスターが出るの?」


 俺とモアが尋ねると、スキンヘッド兄弟は頷いた。


「ああ、俺たちは実は三兄弟なんだ」

「でも昨日、作業中に一番下の弟のマッスルが攫われて……」


 マッスル?? どこかで聞き覚えがあるような。


「お姉さま、マッスルって、あのクレーシーと一緒にいた」


 モアに言われてハッと気づく。

 そうだ、あいつ、クレーシーたちとグルになって剣を盗んだ筋トレ野郎だ!


 あいつが、ここにいる!?


 って事は、あいつを見つければ剣の行方やクレーシーの居所が分かるかもしれない。

 ひょっとしたら、クレーシーがここに居るってこともありえる!


「そうだったのか! それは大変だー! 困ってる人を放ってはおけないなー! 俺も弟を見つけるのを手伝うよ!」


 少し棒読みだったし、わざとらしいかと思ったが、俺が両手を広げて力説すると、兄弟は手を取り合い喜んだ。


「本当か!?」

「それはありがたい!」


「いや~困った人を助けるのは当然のことさ! ハッハッハ!」


「いやー、若い女の子なのに男気のあるやつだ!」

「俺の名はキンニク・ニクタロウ、こっちは俺の弟でキンニク・ムキムキマン。よろしくな!」


 ニクタロウ、ムキムキマン兄弟と握手を交わす。


 よしっ、待ってろよ、マッスル。

 マッスルを見つけて、クレーシーと剣の居所を吐かせてやるからな!





 その後も俺たちは、ミミックやギタイブクロなどのモンスターを倒し、ドロップアイテムの宝石をゲットしていった。


 そして契約時間が終わる頃には、俺たちのカバンやポケットは宝石で一杯になっていた。


「いやー、設けた儲けた!」


 依頼金は少ないが、住居も食事も提供されるし、宝石もゲットできる。ひょっとしたらこれ、かなり旨みのあるクエストなのでは!?


 俺が手に入れた宝石を手にニヤニヤしていると、モアが心配そうに見つめてくる。


「お姉さま、儲かったのは良いんだけど、マッスルさんの行方は……」


「あ、いや、適当にモンスター共を倒してれば見つかるだろ」


 俺がしどろもどろになっていると、チトが半目で俺を見た。


「怪しいにゃ。宝石に目がくらんで忘れているようにみえるにゃ」


「そ、そんな事ないって!」


 俺が慌てていると、ドワーフのお姉さんの声が聞こえてきた。


「さぁ皆さん、宿舎に向かう時間ですよー。トロッコに乗ってください!」


「もうそんな時間か」


 俺たちは急いでトロッコに乗り込んだ。


「空が見えないから、時間の感覚が分からなくなるね」


「そうだな」


 昼間と変わらない暗い岩肌に、ぼんやりと浮かぶ松明の光。


 俺たちはトロッコに揺られながら冒険者用の宿舎に向かった。


 宿舎という呼び名だったが、実際には白い大きなテントのような場所に俺たちは通された。


 寝袋が並ぶだだっ広いテント。テントは男女で別れていて、女は人数が少ないので余裕があるが、男の方はきっと寿司詰め状態になっているに違いない。


「キャンプみたいで楽しいね!」


「うん」


 夕ご飯として出されたスパイシーな肉と野菜のスープを食べ終わる。


「ねぇ、他の人たちにマッスルさんを攫ったモンスターについて聞いてみない?」


 モアが提案する。


「そうだな。確か、マッスルは人の背丈より大きなギタイブクロに飲み込まれたって言ってたな……」


「でかいギタイブクロの目撃情報がないか聞いてみるにゃんっ!」


 俺たちは、テントを回ってギタイブクロの目撃情報を集めた。


 結果、巨大ギタイブクロを見たという男を三人見つけることが出来た。


「ああ、見たよ。こーんなにデカくて黒くて硬かった」

「危うく飲み込まれるところだったよ!」


 男達が震えながら証言する。


「だいたい目撃地は北側に寄ってるな」

「それにみんな、大きくて魔力の強い石を掘り当てた直後に襲われてる」


 俺とモア、チトの三人は顔を見合わせ、頷きあった。


「魔力の強い石を持って、巨大ギタイブクロをおびき寄せよう」

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