第10話 募る不安
いつでもバーにいるよって言ったらきてくれるエンくんとの日々
会える時間は短いけれど、毎日のように通いつめた。
エンくんを送って家路に着く。いつでも
あがっていけよって言葉を期待していた。
いろんなタクシーに乗った。
時に運転手さんにぼやきながら
お客さんが惚れてるんだから仕方ないよって言われたっけな。
彼は年末年始実家に帰る。
かなえは仕事。
エンくんが休みの日に仕事終わった後に電話
なんて甘いこともなかったけれど
このときは彼のペースを尊重していた。
自分の世界があってこだわりが強い彼のペースを。
連絡が無いときも、忘れているだけだとちゃんと思えていた。
新年の挨拶も彼から来ず、お昼を過ぎたころ、かなえから送る。
喪中だったからあけましておめでとうは言えないけれど
今年からよろしくお願いします。
と
エンくんからは
はーい。
とだけきた。
私は愛されているのだろうか、エンくんからしたらただのお客さんなのだろうか?
このときはエンくんの本業のほうへも足を運んでいた。20分程度一緒に話す為だけに。
一月も半ばを過ぎた頃
エンくんが風邪を引いた。
彼女ならば、家を知っていたら、看病しに行けたのに。かなえに出来ることはお店に風邪薬と差し入れをするだけ。
エンくんは私を頼ってはくれないから、バーのエンくんと仲の良いスタッフさんにエンくんが風邪を引いていることを伝える。
この時初めてエンくんに報告せずにバーにきた。
そう、最初はきてほしいから送っていたのではなく、知ってほしいから、エンくんにも教えてほしいから
だからいつも報告していた。
報告すると来てくれるから、風邪をひいているエンくんには教えなかった。
かなえにとってこのバーは
スタッフさんにエンくんへの気持ちを伝える場所になっていた。
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