初めての場所
いくま
初めての場所
ちょっと寄り道して帰ろう。
そう思ったのはただの気分で、1人で何も考えずにブラブラしたいなって、そう思ったから。
駅から少し離れたその通りは、少し古くて、どこか懐かしくて、温かい。まるで、城下町をイメージするような、そんな場所。
いつからだろう、来なくなったのは。
自ら外に出ることを拒み始めたのは。
久しぶりに来たそこは、街並みはそのままに飲食店や雑貨店が増えていた。
1つ1つが新しくて、少し古くて、この温かい街並みに合わせられて作られていた。
私は妙に嬉しくなって、歩くスピードが少し早くなった。
その時、私は通り過ぎていた。小さな小さな看板と、細く長い路地を。
きっと誰かと歩いていたら気づかないような
そんな感じ。この細い路地に入っていいのかわからなかったけれど、私は迷いなく足を踏み入れた。細くて、長い路地。
この先に何が待ってるんだろう。
どんなものがあるんだろう。
そんなワクワクと、勝手に入ってしまった罪悪感が混ざって、変な気持ちになっていた。
奥にあったのは、小さな蔵を改装して作ったこじんまりとしたカフェ。でも不思議と暗い感じはなくて、そこだけ太陽の光を燦々と浴びて大きくなった木のような、そんな存在感があった。
でも、その存在感が大きすぎてカフェに入る勇気が私にはなかった。どっしりと構えるそのカフェに、入る勇気はなかったけれど初めて、1人で来てみたい。そう思える場所だった。
きっとここは、私にとって特別な場所になる。そんな気がした。
初めての場所 いくま @kicho_ikuma
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